第4話 - 変異
女の子は俺の方へ近づいてくる
(誰だろうこの人?おへその周りのホクロはなんだろう?)
女の子は話しかけてきた
「なーん。お腹のホクロは乳首だよ、お乳はでない」
!?
どういうことだ!会話ができる!!しかも考えてる事もわかるの?
ニャーゴ~ゴロゴロゴロ
(俺の声が聞こえるのか?)
「なーん。聞こえるよ、あたしはバステト。古き友との約束により君に道を示す女神」
(バステト…)
「そう、猫の女神」
女神と名乗る女の子は俺の側に来るとあぐらをかいて座った
そして俺を両手でつかむと、持ち上げ、膝に座らせた
バステトは俺の頭と顎を撫でながら話す
「なーん。君は条件を満たした、これから君が選ぶ事の出来る道を示す」
ゴロゴロゴロ
(道?)
「君はこれから変異する。魔物になるんだ」
ニャッ!
(魔物になるの!?)
「選べる道は4つ」
それぞれの姿が頭の中に流れ込んでくる
・二又
尾が二つに分かれた猫、簡単な火魔術を使える
・ミニケト
ケット・シーの幼体、簡単な風魔術が使える
・カバデス・キャット
別名:貪る猫、とにかく大食いで体も大きめ、力も強い
・オセロット
一回り大きい猫、カバデス・キャットより力は弱く、素早い
ニャニャッ!
(ちょっと待って!魔物にはなりたくない!)
「なーん。無理だよ~。君は魔石を食べた、蓄積した魔力が君の体を変質させてしまう。選ばなきゃ、体が耐えられなくなって溶けてしまう」
シャーッ!
(エー!!)
変異を受け入れなきゃ死ぬのか…俺は前足を口にあて、考えた
ニャ~ゴ~…
(あんまり今の姿から変わりたくないなぁ…二又にする)
「二又は簡単な火の魔術を使える、尻尾に意識を集中して火のイメージをするといいよ。また君が魔石の力を蓄えたらここに来ることがあるかもね、困ったことがあったら、赤い木の実を水たまりに沈めてあたしの名前を呼ぶんだ。また会おう」
そう言うとバステトは大きな木に語り掛ける
「なーん。彼の者は今より二又として生きる、我が御名の祝福を授かるだろう」
大きな木から目が眩むほどの光が溢れ、目の前が真っ白になった
…
目が覚めるとかまどの中で目が覚めた
変な夢だった、かまどの外へ出て体をプルプルと振るわせ、伸びをした
ちょっと煤で汚れちゃったかな?毛づくろいをしよう
毛づくろいを手、頭、腹、尻尾が!!!!ふたつになっとる!!!!!
目ん玉飛び出るかと思った、夢じゃなかったの…
バステトが言うには火の魔術が使えるんだっけ?
試してみるか…うーん、こうかな
俺は目を閉じ、尻尾の先に小さな火種をイメージした
(尻尾が少し暖かい)
目を開き、尻尾を見ると、尾の先に小さな火が灯っている
(うわー、マジで出たー)
人間の頃は魔術は使えなかったので新鮮だ、これで肉も焼けるだろうか
尻尾を勢いよく振ると、火は消えた
(ほんとに魔物になっちゃったのかぁ…ますますこれからどうしよう)
…
しばらくふたつになった尻尾を眺めて右に左に動かしていると、村の方向から声が聞こえる
結構距離があるはずなのにここまで音が聞こえてくるって事はすごく大きい音だ
俺は耳をピクピクさせながら村へ向かった
…
村へ向かう途中、道の途中の木の下でうずくまっている子供を見つけた
膝を抱え、うつむいている。だが見覚えがある
俺は子供の側に近寄り、鳴いた
ニャ~ゴ
(クレア?)
子供はパッと顔を上げると涙ぐんでいる
クレアだった
「ニャーゴ?ニャーゴ!!」
クレアは俺の姿を見ると抱きかかえ、泣き出した
「村が…村がゴブリンに…うわぁぁぁぁん」
ゴブリン?そういえば見かけなかった
村がゴブリンに襲われているのか??
俺は様子を見に行こうとクレアの膝から抜け出した
クレアは震えながら俺を呼び止める
「ニャーゴ!待って…行っちゃうの??」
よほど恐ろしい目にあったんだろう、膝はすりむき、顔にも擦りむいた跡がある。全力で走って、転んだんだろう
置いていくのはさすがに可哀想に思えた
俺はクレアの膝の上に丸くなって座り、クレアが落ち着くのを待った
…
結局朝になってしまった
クレアは立ち上がり、涙を拭くと俺を見て声をかけた
「ニャーゴ!村を…見に行こう…」
俺はじっとクレアの顔を見つめた
今にも泣き出しそうな顔をしているが、拳を握りしめ必死に恐怖と戦っている
ニャニャッ
(俺も一緒に行くよ)
「逃げちゃダメだよ!絶対だよ!置いてったら全力で追いかけるからね!!!」
ニャッ
(わかった、一緒にいるよ)
「怖くないよ!ニャーゴは怖い?逃げたら追いかけるからね!!」
ンナッ
(はよいけ)
…
クレアと一緒に村が見える所まで来た
小さな岩の上に登って村の様子を見る
完全にゴブリンの集落になっている
ゴブリンたちは我が物顔で歩き、村の広場には死体が見える
クレアは涙を堪えて、静かに走り出した
しばらく走るとクレアは堰を切ったように走りながら泣き出す
「うわぁぁぁぁ…お父さん、お母さん!!」
後を追いかけているとクレアは派手に転んだ
頭から地面に叩きつけられ、足は海老反って頭の上まで跳ねあがる
(可哀想に、あれは痛い)
クレアは起き上がらない
俺は側に寄ってスリスリした
しばらく泣いた後クレアは起き上がり、俺を膝に抱いてまた泣いた
「えっ…えっ…ひとりぼっちになっちゃった…えっ…うぅぅ」
(まだ10歳かそこらだったはずだ、可哀想に)
「ニャーゴも…えっ…ひとりぼっちになっちゃったの…ひっ…」
ニャ~ゴ
(そうだね…魔女も兄弟もいなくなっちゃった)
「いっしょ…ひっく…いっしょだね…ひっ…」
俺はクレアの口を舐めた
クレアはまた泣き出し、疲れると寝た
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