第2話 僕の好きなもの
僕が東雲さんと出会ったのは大学の時だ。
文学部に入ったばかりの僕は周りと上手く馴染むことができず、講義を一人で受けていた。
そこで、たまたま同じ講義を取っていた高校の時のクラスメイトに紹介されたのが始まりだった。
「西日、こちら東雲さん。同じサークルの友達なんだ」
「あ、初めまして。
「初めまして。
お互い少し人見知りで、目も合わせられないまま挨拶を交わしていると「なんか暗いなあ~」とクラスメイトは笑った。
彼女も「ふふっ」と可愛らしく笑う。
その流れで一緒に講義を受けて、学食で昼食を取った。その頃にはもうお互い人見知りも無くなっていた。
何度かの講義と、同じ数の昼食を共にして。
夏休み前の期末試験日。
「――東雲さんのことが好きです」
僕は彼女に告白した。
連絡先も交換せず教室で会っていただけだった関係の儚さに焦りもあったのかもしれない。
この講義が終われば、もう会えなくなる。そんな気持ちに突き動かされた。
「まだ、早すぎる気がする」
彼女の答えを聞いて、やっぱり、と僕は思った。
やっぱりと思ったからには勿論僕にもある程度そう言われるかもしれないという予感はあったわけなので、実際そう言われても大したダメージはないんじゃないかと高を括っていたが実際言われると地獄に落ちた。
「もっとお互いを知ってからじゃないと……」
「そ、そうですよね」
口はそう言いながら、内心ではそんなこと関係ねえだろとか思ってた気がする。
だってもう、僕は好きになってしまったのに。
これで終わりとかマジか。
これで終わり。
……これで終わり?
「じゃあ」
そんなの、嫌だな。
「これから知っていきませんか」
どうにかしなきゃどうにか、と僕は足掻いた。
「あなたの好きなものは何ですか?」
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