第3話:殺されるっ!?

◇ ◆ ◇


善は急げ。据え膳食わぬは男の恥。


家をでた俺は、美奈の家に向かっている。

まずは「一緒に通学」イベントを発生させるのだ。


と、道を歩いていると、前方から人影が……。

まさか美奈か?


って、男じゃねーか。

おおおっ!? アイツは……!


「おお!! タク! 久しぶ──じゃなかった……おはよう!」


俺の小学校からの同級生、中田拓也なかたたくやだった。


俺はタクと呼んでいる。

小学校からの付き合いだからこいつも幼馴染みたいなもんで、俺の親友だった。

ただ、大学に入ってからは、めっきり会うことも無くなってしまった。

意外と結婚が早かったのて、遊ぶ機会が減ってしまったのだ。


……しかし、このもっさい感じの天然パーマが懐かしいなぁ、おい!

若いときのこいつと会えて、すごく嬉しいし、なんか安心してしまう。


……というか、若すぎてなんかかわいく見てくるぞ!


いやいや、俺が男を好きとかショタコンではないことは断言しておく!

おっさん目線で高校一年をみたら、あどけなくてかわいく見えちゃうってだけだ!


そんな事を考えているうちに、とぼとぼとタクが近づいてきた。


んんっ?

なぜかこちらを睨んでいる……?


「おはよう! タク! どうした? 機嫌が悪いのか?」


もう一度声を掛けるが、拓也は返事をせずに、俺の脇をとおりすぎると──


「お前を……殺す!」


物騒すぎることをつぶやいた。


「──っ──」


どうした、どうしたんだ、タク!

なんで俺に向かってそんな事言うんだ!?

俺たち親友じゃないか!

何か俺が怒らせるようなことをしたのか?


……しかし、俺はすぐに思い出した。

こいつの性格を。こいつの行動パターンを。


つまり──俺がすべき返しはこうだ!


「……なんなの、この人……」


……どうだ? とタクの顔を見ると──


「──流石だな、達也! お前も見てるか、ガン○ムW」


にまっと笑っていた。


「お、おう!」


「いや~、面白いよな、ガン○ムW」


「そ、そうだな!」


「お前を、殺す」はガン○ムWの主人公の有名なセリフだ。

そう、タクはかなりのオタクで、アニメネタを日常でふってくる奴だった。


どうもタクの話しぶりからすると、ちょうどガン○ムWが放送されているらしい。

俺がいた時代ではネタあつかいされているが、当時は厨二病的にささるセリフだった。

俺も真似していた気がする。


うわぁ~、実際にこの時代に戻ってきて、タクと話をしていると、懐かしすぎて涙がでてきそう……!


「……なんで泣いてるの、お前?」


実際に泣いていたようだ。

タクに心配されてしまった。


「な、なんでもない。花粉だよ、花粉」


涙をごまかしながら、二人で美奈の家に向かうことにした。


 ◇ ◆ ◇

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