エマニュエル 1-4
エマニュエルは時間があえばソフィーナの元に通った。
食事のマナーについては母親であるアンジュから教わっているようで問題なかった。しかし、カーテシーやお茶会など貴族特有の物に関してはまったく教わっていなかった。
楽しく遊びの中に組み込みながら、ソフィーナに身につけさせる。我ながら鬼教師だと思うほど、完璧さを求めた。
ソフィーナは泣き言を呟きながらも、自分がどんどんできていくのが楽しかったようで、少しずつ確実に美しい動作やマナーを覚えていった。
基本的な物はすべてできるようになった時、いよいよドレスが必要だと感じたエマニュエルは、城の侍女に黄色のドレスを用意させた。
「それ、わざわざ持っていくんですか?」
ニコラがそこまでやるのかと驚きを隠せないでいる。
「ドレスを着こなせなければ社交界デビューはできないからな」
自分が選んだ黄色のドレスはソフィーナによく似合うだろうと思うと、楽しみで仕方ない。
「王家に伝わる婚約のダンスも教えなければならない。やることが多い」
そう言いながらもエマニュエルの表情は明るかった。
「そこまでされるに相応しいお相手なのですね」
今までなにも聞かず、ただ見守っていたニコラが確信を持って尋ねる。
「あぁ。ダンスが完成したときにはプロポーズしようと思っている」
エマニュエルのこんなに優しい顔は初めて見るなとニコラも嬉しくなった。
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そして、ダンスも完璧に踊れるようになった時。
エマニュエルはソフィーナの前に跪いた。
「ソフィーナ、私と結婚してほしい」
ソフィーナの顔はみるみる赤くなり、満面の笑顔になった。
「エルが相手なのに思わずときめいちゃった。女の子に言われてこんなにときめくなら、男性に言われたら正気でいられないかも」
ソフィーナの言葉にエマニュエルは固まった。
「…おんなのこ?」
「女の子って失礼だった?でも、エルは私の理想の女性よ」
その言葉にショックを受けたエマニュエルは、誤解を解くこともせず城まで帰っていった。
そわそわと待っていたニコラはエマニュエルの表情を見て、ダメだったかと察する。しかし、エマニュエルの口からでた言葉は予想外の言葉だった。
「ソフィーナは私を女だと思っていた」
「殿下をおんな…」
予想外過ぎて返答に困っていると、エマニュエルが見つめながら聞いてきた。
「ニコラ、私は女に見えるか?」
「私には見えませんが…。そうですね。確かに中性的だとは思います。ソフィーナ様の兄ジャルペン様は筋肉ムキムキの方ですから…」
言葉を選ぶように慎重に答えたニコラに対し、エマニュエルはふさぎこむようにうつむいた。
「ニコラ、王族としての義務で、騎士と2年間の遠征があったな」
「ええ。無理を言って現在延期してもらっていますが」
エマニュエルが決意したように固く手を握った。
「私は明日よりそこへ行く。もう女だとは言わせない!」
エマニュエルは体を鍛えることにした。もう二度とソフィーナに女性だと勘違いされないために。
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