第3話

 世界恐慌に重なって世界的飢饉が三度起こって以降、日本国も人口が最盛期と比較して、およそ三分の二ほど減少した。

 国として維持させるためには都市活動を縮小せざるを得なくなり、おもに十のエリアが『都市』の代わりとして、いまもどうにか生きている。

 そのうちのひとつである神奈川は、もとより工場地帯だった歴史を存分に生かし、機械人形『ドルチェ』の国内部品製造を一手に担っている。

 神奈川エリア製造の部品は質がいいと、国内外からディーラーがわざわざ買い付けに来るほど、その技術力と生産性は華々しいもの。

 いまや“工業都市”と呼称されている神奈川エリアには、日本中ないし世界中からその技術を学ぼうと、人びとが集まってくる。

 神奈川エリアに住むひとのほとんどが、どこかしらの工場で働いているのが当たり前なのも納得だ。

 悪魔祓いが元々はヴァチカンの専売特許であったのに、いまやトップの座を神奈川エリアが奪わんとしている原因と理由はここにあるといっても、決して過言ではない。

 人が集まり、関わり合いになるほどに、人の悩みは無量大数に増えていく。

 人の感情は喜びや楽しみ、愛しさだけではない。怨恨、妬みといった悪魔が好む傾向にある負の感情だって、もちろんある。

 人の感情がコントロールできるというのなら、神父やシスターは必要ないだろう。

 だが現実は、彼らを強く求めている。

 こころの声に耳を傾けて、迷える魂を救ってくれる彼らを。

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