グリンワーズの災厄の乙女(カクヨム)
【グリンワーズの災厄の乙女】/青柳朔様
https://kakuyomu.jp/works/1177354054882033722
掲載サイト・カクヨム
15.6万文字
災厄の乙女として森の奥深くの塔に幽閉された少女と、〈災厄の乙女〉を憎み、殺そうと企む元騎士のレギオン。
──〈災厄の乙女来たり。白き髪に深緑の瞳を持つ乙女、この国に災いをもたらすだろう〉──
託宣によって狂わされた国に少女の居場所はどこにもなかった。
死ぬことも許されず自分の名前も忘れた少女の名をレギオンは囁く。悲哀と恋情を込めて。
◇◇◇
▼個人的な見どころポイント
*ふたりの駆け引きじれじれべる
★★★★☆
一概に恋とは言えない、カテゴリに分類できない複雑な関係性に最近ハマってしまいまして、レギオンと災厄の乙女もまさに名前のつかない関係です。
二人の間に生じた感情は、ストックホルム症候群(誘拐事件の被害者が犯人を好きになる)と呼ぶか、あるいはリマ症候群(誘拐事件の犯人が被害者を好きになる)と呼ぶのか。
最初はもしかしたらそうだったかもしれないし、そうじゃなかったかもしれない。
災厄の乙女が儚げな外見によらず性格が頑固で苛烈なところがあるのですが、年上のレギオンが十代の少女の手のひらの上で転がされるのをニヤニヤと見守ってしまいます。
各章でレギオンパートと少女パートの一人称で語る形式となっているため、二人の心情もわかりやすい。
覚醒レギオン(なんだそれ)のセリフ
「嫌なら噛めよ」……あの、ほんと、ちょっともう、ありがとうございますうううう!ってセリフでした。何のことかは物語で確認してみてください❤️
物語では恋愛だけではなく、特定の容姿を持つ人間への差別、迫害、現在でも世界各国に根付く後ろ暗い問題も扱っています。
作中では白い髪と緑色の瞳が災いの元凶とされ忌み嫌われています。それこそ白い髪に緑の瞳を持つ女性は娼館に売られて娼婦としてしか生きる手立てがなかったり、街角で通り魔に殺されても災いの元凶だから仕方がないと嘲笑されるほどに。
容姿差別は日本でもありますね。子どもの頃なら身長の高い低いが最たるものかと。
私は背が低い方でしたが、背が高いだけで威張り散らす小学生の「背が高い方が偉いんだヘリクツ」あれは謎でしたね……。
謎ヘリクツなら地毛が茶色がかっているのに校則で黒髪にしろと言われ先生に無理やり髪を黒くさせられるとか。
学校で勉強するだけなら地毛が茶色だろうと本来は関係がないはずなんですが、「こうでなければいけない」と凝り固まった固定観念や慣習から抜け出せずに無意識の差別や迫害をする人達はまだまだいますね。こちらの作品を読んでいて、そんなことを思いました。
【グリンワーズの災厄の乙女】も、白い髪に緑の瞳を持つ女は悪だ、と最初から決めつけてほとんどの国民がそれ以上に思考を深くすることを放棄しています。
「こうでなければいけない」の固定観念に沿っていれば楽だから、間違っていると気付いても正そうとはしなかった。だって、ずっと昔からそうだから。
託宣により狂った国に
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