小樽あやかし香堂(アルファポリス)

【小樽あやかし香堂】/森原すみれ様

掲載サイト・アルファポリス、エブリスタ

12.9万文字、完結


 物語の舞台は北海道。

主人公のつむぎちゃんは身に覚えのない冤罪をかけられて会社をクビになり、会社経由で借りていたアパートも追い出され、家なし職なし、おまけにあやかしまで視えちゃう不幸体質。


 行き場もなく打ちひしがれる彼女は札幌駅で見かけた不思議な子犬を追いかけ、やがて辿り着いた小樽おたるの地で和服の美青年、紫苑しおんと出逢うのですが……。


◇◇◇

▼個人的な見どころポイント


*ストーリーのほっこりレベル

★★★★☆

 主軸は小樽に暮らすあやかし達とのほっこり系日常ドラマ。

小樽運河を住まいにする河童の美女や子供の小豆洗い、猫又に山の天狗、個性豊かなあやかしが登場するストーリーはほっこりだけではなく、時に不穏な気配も漂わせ、読み進むにつれて作品の印象が変わります。


 この物語はまるで刻々と移り変わる空の表情のよう。

小樽の清々しい青空に癒やされ、切ない夕焼け空に感傷的になっていたかと思えばふいに襲われるのは、が夜の闇に溶けて消えてしまう恐怖。

特に不穏の種は、あの人。



*紫苑さんの天然たらしレベル

★★★★★

 家なし職なし行き場なしの紬ちゃんが働くことになったお香屋さん、小樽たちばな香堂の店主が紫苑さん。

上で述べた不穏の種がこの人です。


 読書に選ぶ作品がことごとく仏頂面で口調の荒いツンデレイケメンさんが出てくる物語なので(笑)、私が選んだ作品には珍しく紫苑さんは穏やかな微笑が似合うお優しい紳士です。

ツンデレというよりは紫苑さんは天然人たらし。

天然人たらしに天然あやかしたらし。


 しかもこの人、優しいだけじゃないがあるのよ。

たまに見せる冷たい瞳がTHE、ふ、お、ん。



*美しい文章で綴られる小樽の景色

★★★★★

 まさに「読む小樽観光」。

小樽の街並みの描写は運河が流れる異国情緒の情景が脳裏に浮かんでくるようで、有名な硝子細工のお店も登場します。


 小樽は修学旅行以来訪れていないのでまた行きたい。私も硝子細工のお店に入ってお土産買ったなーと懐かしくなりました。


あやかし系でもバトルやおどろおどろしい物は苦手、可愛いあやかしと天然な女のコと和服美青年にほっこり癒やされたい、そんな人におすすめです。

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