断章2 愛し合う2人の距離感

 あれから、数か月が経った。

 結局、彼女と話したのは、あの雨の図書館の日だけだった。


 だけど……


 あの日確かに、俺と彼女は『恋愛戦線』を介して通じ合った。

 彼女も俺との間の何かを感じたのは間違いない。


 ただ、残念な事に、学校では、俺とはクラスが別である事から接点はあまりなかった。

 廊下ですれ違ったり、学年集会なので集まる時しか、彼女の姿を見ることができない。

 

 でも、数少ない逢瀬の瞬間、彼女は間違いなく彼女は俺を見ていた。

 それが俺の思い込みのはずがない。

 なぜなら、俺と彼女は心と心で繋がっているからだ。

 

 彼女は、俺と一緒でシャイなようで、あの雨の図書館以外、俺にアプローチすることはなかった。

 それは残念だったけど、俺は、この微妙な距離感に満足していた。


 それに、前回は彼女が勇気を出してくれた。

 今度は、俺が勇気を出す番だ。

 

 だが、いいタイミングがなかなかやってこないうちに夏休みに入ってしまった。

 彼女に会えない夏は、俺にとっては空虚だった。

 ネット小説を読んでいても、心が逸ることがなくなっていた。

 

 早く彼女に会いたい。

 そんな事を考えていた夏休みの終盤のある日

 

 俺は不意に、彼女は夏休みも図書館を利用するかもしれないと閃いた。

 そもそも、二人の出会いは図書館なのだ。

 

 そうだ。そうに違いない。

 それに、二人の愛の時計の針を再び進める場所が図書館であるのも必然に思えてくる。


 彼女とはいろいろと話したいこともあった。

 お互いの事、これからの事

 

 そして二人を結び付けた『恋愛戦線』の事を……。


 あれほど面白かった作品なのに、最近はつまらなくなってきたのだ。


 ハーレムものなのに、一人のヒロインがメインになりかけていた。

 主人公もこれまで、よくある王道のテンプキャラで、薄味のキャラだったのに、泣き、叫び、苦悩し、笑うなど、生々しいむき出しの感情の表現が増えてきていた。


 そんなものを俺は求めていない。

 ライトノベルは、何も考えずにストレスレスに読めれば、それでいいんだ。


 それは彼女も同じ意見のはずだ。

 

 俺は、暑い日差しの中、自宅から図書館へ向かった。



****


「貴方はそれでいいのですか?」


 自宅近くの公園にたたずむスーツ姿の青年が俺に向かってそう語りかけてきた。

 

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