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「飛び道具とはな、実に面白いッ! だが――」
典空めがけて放たれた《氣》を見て、典空はなおも笑っている。
「儂を飛び道具で退けるなら、範士が使う弓か火縄銃を持ってくるのじゃな!」
典空はそう喝破すると、棒を回転させる。
武士の武器は刀ではなく、槍、弓、銃の遠距離武器だ。典空が棒を使うのは当然のことだ。
「嘘だろ、氣を弾いた!」
典空が《氣》を弾き返す姿を見た和樹は驚愕し、歯噛みさせられる。
弾いた氣で後ろの壁にひびが入る。どうやら弾き返したせいで威力が増したようだ。奥義の名前は伊達ではなかったというわけだ。
「我武者羅なのは結構、だがそれだけではな……ッ!」
典空が棒を回すのをやめ、迎撃の構えを取る。
鍛えられし棒術による守りは完璧だ。典空の八代目住職は伊達ではない。
「……仕方がありませんか」
見ていた僧が経典を取り出し、何事か念仏を唱えだす。
「――ッ!」
念仏を聞いた典空の動きが鈍りだす。
「申し訳ございません。念仏を唱えさせていただきました」
「なるほど、住職とはいえ。儂も霊には違いないからな……!」
念仏はマイナス電化を乗せた言霊により《霊》の存在に強く干渉するものだと和樹は聞いている。
「ふむ……。そこの僧よ。なぜ守護者を目指す者と同行しておる?」
典空は構えを解き、僧に問いかける。
「え?」
僧は問いかけに念仏を唱えるのを中断してしまう。だが典空が策を弄したいわけはないというのは分かる。
「そうですね。最初は、興味本位でありました。遺跡を発掘し、《秘宝》を悪用する連中から守るというお題目を掲げ何をしているのかと」
「……疑われたのかよ?」
動きを止めた和樹がきょとんとした顔をする。
とはいえ疑わるのも無理はあるまい、トレジャーハンターはフィッシャーマン・ファウンデーションなどがの社会的地位を保証してくれなければ、ただの盗掘者なのだ。
「しかし、このような依頼にも足を運んでもらい。知恵を用いて謎を解き、怪物と戦う姿を見て。考えを改めました」
「そうか……」
胸をなでおろす。フィッシャーマンの思想を理解してもらえたのは嬉しい話だ。
世界を飛び回り歴史に触れ、学問の発展や安全に貢献している
「我々も僧侶もそうです。自分の為だけでなく、みんなが心穏やかに暮らせる役に立てれば、と。我々、僧は思っております」
「……」
それを聞いた典空は目を閉じ、しばし沈黙する。
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