第4話
優柔不断で決断力のない自分を
しかしそんな
七月初旬のある水曜日。
夏の陽射しに追いやられるように行彦の元に辿り着いた
その後、京はバスローブ姿でリビングに現れた。自前のものらしい。ずいぶん用意が良いんだなと初めは感心していた行彦も、やがてその
「せんぱぁ~い」
京は甘えた声を出しながら行彦の首に両腕を回す。
背徳感に手繰り寄せられるように行彦はソファに腰を沈めた。いまや自制心は彼の尻に敷かれて役に立たない。
膝立ちになってこちらを見つめる京。火照った彼女の体温が自分のなかに流れ込んでくるようだった。上気した顔、星くずを散らす濡れた髪、漂うフレグランスの香り、とろんとした眼――すべてが行彦を快楽に
ローブから覗く胸の谷間を水滴が伝い落ちる。視線が吸い込まれる。意識が呑み込まれる。一線に、手をかけ……。
ガチャリ、と扉の開く音がした。玄関からだ。そのすぐあとに彼女の声がリビングに広がる。
「ただいまー。もうまたやっちゃったわ、忘れ物。何回するんだって話よね。みやちゃんに頼もうと思ったんだけど、返事なくて――」
言葉と足音が途切れたのはほとんど同じだった。張り詰めた空気にリビングが凍りつく。息が詰まる瞬間が永遠に引き延ばされたようだ。
湊の生気のない視線が行彦を捉える。
驚き慌てふためくか、容赦なく糾弾してくれたなら、行彦もこれほど怖気立つことはなかった。湊はとても落ち着いた様子で眼の前の状況を
「薄々は気付いてたの」湊が口を開いた。「行彦、みやちゃんの話題になるとすぐ話を逸らそうとしたから。あとは初めて行った店でも妙に慣れてたり、私と話してるのに眼だけは違うとこ向いてたり……だけど決定的だったのはあの紙袋」
それは京が生菓子を入れて持ってきた紙袋のことだ。あの夜、食事を終えて帰宅すると、湊はソファの下に自分が受け取ったのと同じ紙袋があるのを見つけたという。そこから行彦の最近の態度も考慮した結果、前々から疑っていた京との密会に確信を持ったらしかった。
「それでもずっと訊かなかった、浮気してるのって。どうしてか分かる?」
行彦は答えなかった。「信じてたから」という湊の言葉を受けても黙るばかりだった。口を開けば情けない言い訳しか出てこない気がしたからだ。京も何も言わない。ソファに座り直して、ただ俯くだけだ。
やがて湊は二人に背を向けた。玄関を開けて部屋を出ていく。リビングには再び静寂が訪れる。
喪失感だけが行彦の時間を
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