第13話 ミヤモ
ホグワットの森を抜けると見えるゆるやかな川。それに沿って進んでいくと、木でできた小さな家がある。
日は傾き、水面に夕日が反射して、周囲の草木と暖かな景観をつくっていた。
川に面した家の庭で、小さな女の子が金づちを振るっていた。
額の汗をぬぐいため息をつく。私が川辺の砂利を踏みしめる音に彼女は気付いたようで、振り返り、不服そうな表情をこちらに見せた。
「アロー。あなた、今何時だと思っているんですか」
「ごめんミヤモ、いろいろあったんだよ」
庭には、ミヤモが一人で作り上げたであろう、いびつな形をした椅子やテーブルが雑に放られていた。
「私の手先が不器用なことくらい知っているでしょう。だからあなたがたにお手伝いを頼んだんです」
「得意の魔法で、どうにかならないの?」
「魔法は万能じゃありません。ほら、あなたも運んで」
彼女は椅子を持ち上げ、家の中の薄闇に消えていった。
出来そこないの家具の搬入がひと段落し、夕食の時間を迎えた。
モウからとれたミルクで野草を煮込んだ、とろとろのスープが今夜のメインディッシュだ。小人の身の丈に合わせて作られた椅子が窮屈でも気にしない。
「それで、あなたはアスカルの都に向かうと」
手伝いに来れなかった
「スズの家を占拠したのは魔術機関のやつらだから。何か知ってるかもと思って」
それを聞いたミヤモは、手の中のスプーンを置いて立ち上がった。
「帝国魔術なら、知り合いがいますよ」
彼女はベッドの横にあるキャビネットから、丸められた古紙、便箋、封筒を取り出した。ペンを取り、さらさらと筆を走らせる。
「アスカル周辺の地図です。これに彼の住処が記してあります。紹介状を書きましたから、何か力になってくれるはずです。……少し変わった方ですけれど」
ミヤモから地図と封筒を受け取る。封筒を裏返すと、『サキへ』と宛名が書かれていた。
「スズの家は、私が調べておきましょう。立ち入れるかは分かりませんが、帝国魔術なら、ある程度顔がきくかもしれませんから。何かわかったら、サキの方に手紙を送っておきますね」
窓の外、ホグワットの空はすっかり夜になっていた。
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