第12話 帝国魔術研究
「兵長、報告です」
兵士が顔を覗かせる。
帝国軍の駐留施設、その一室で取り調べを受けていた。
「今、アローの話を聞いているところなんですが」
机を挟んだ向こう側、銀の鎧を纏う兵長の元に歩いて行った兵士が耳打ちをする。すると、兵長の顔がどんどん険しくなっていった。
「……またあいつらか」
「どうした」
長々と取り調べを受けていたが、彼が感情をあらわにするのはそれが初めてだった。もの珍しさに、つい口を挟んでしまった。
「あなたには関係ない」
「またそれか」
想像通りの反応だった。兵長が兵士に耳打ちすると、兵士はこくりと頷き、去っていく。
「私たちの、帝国内部の話です」
敬礼の後、兵士は部屋を後にした。
「その感じだと、仲間割れか」
兵長が私を睨む。当然睨み返す。長時間拘束されたお返しだ。
ため息をついて、彼は口を開いた。
「スズキトシヒコの家は、帝国の魔術研究機関が封鎖を決めたそうです」
帝国魔術研究。その名の通り、帝国による魔術の研究機関。ホグワットの森で私と居合わせたこの兵士たちは、おそらく帝国軍所属の兵隊だ。同じ帝国内部でも、彼らとは別の畑の住人だろう。
「別の所属の奴らに、仕事を持ってかれたということか」
兵長は椅子から立ち上がり、窓際に近寄った。
「魔術の発展を追求する機関だとか言ってますが、実際何をやってるかはよくわからない、気味の悪い連中です」
一般に流通している魔法書のほとんどは帝国魔術研究によって書かれている。今日使われている魔法に大きな影響を与えている存在だと言えるが、実働部隊である帝国兵とは違い、表舞台に出てくることはまずない。
「ここ最近も、なにやら大規模な魔術実験を行っている噂を聞きましたが……一体何をやっているんだか」
魔術実験。ホグワットで観測された魔力と、何か関係があるのだろうか。
「どうでしょう。重要な実験であれば、アスカルにある研究本部で行うと思いますけど」
「内部情報を、ずいぶんペラペラと話すじゃないか」
兵長は、窓の外を見たまま振り返らない。傾き始めた日の光が差し込み、彼の銀色の鎧が鈍く輝いていた。
「あいつらのやっていることなど、私には関係ないことです」
彼は小声で呟いた。
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