第8話 馬車に揺られ
「君の名は?」
「アロー」
「スズキトシヒコとはどういう関係ですか」
「仕事仲間」
「交流の期間は」
「どうだろ。10年とか、そのくらい」
ホグワットの森の中を、馬車が進んでいく。正午を回っても、森の中は薄暗い。
「で、この馬車はどこに向かってるんだ」
木々の隙間から光が差し込み、やわらかい土の上にまだら模様を落としていた。
「イッシです。私たちの駐留所行き。」
車内にはアローと帝国兵の2人。向かい合い座っている。
ペンを手に調書を取る兵士。アローは窓の枠に肘をのせ、頬杖をつき外を眺めていた。
「帝国のことだから、すぐ手錠をかけられると思っていたんだが」
「私たちもそこまで手荒じゃありません」
ちゃっかり弓を取り上げておいて何言ってるんだ。とは、アローは言わなかった。
「さっきスズが消えたとか言っていたが。一体何が起こったんだ」
「それを調査しているんですよ。……ただ」
視線だけ、アローは兵士にあわせる。
「昨日、膨大な量の魔力がホグワットの森で観測されました。その中心点に、彼の家があったのです。」
馬車が揺れる。
「魔力……この森で?」
アローは森を睨んだ。
「人も住まず、強大な魔獣もいないこの辺鄙な土地では、本来観測されるはずのない質量でした。スズキトシヒコの消失と、無関係とは考え難い。」
馬車はゆっくりと、森の中を進む。
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