第7話 現代への来訪者

 真城は職員室のとなりにある応接室に通された。

「真城。向こうが少しでも不審な動きをしたらすぐ呼べよ。俺は部屋の外で待ってるから」

 真城の担任・田中はそう言って扉を閉めた。

「君が真城くんか」

 中にいた男が立ち上がる。朝見たおじさんに間違いなかった。

「窓ガラス片付けるの、大変だったんですけど。修理代、弁償してもらいますよ」

真城が男を睨む。

「で、あなた何なんですか、こんなとこまでやってきて。一体何が目的?」

「俺はスズ、朝はすまなかった。きみ、俺が落とした本、持ってないか?」

「持ってますけど、そもそもあなたは何者なんですか」

 スズは真城ににじり寄った。

「悪いが、今は説明してる暇がないんだ。とにかくあの本を――」

 ドスン。

 扉の外で、何かが倒れた音がした。

「え?」

 真城が後ろを振り向く。応接室の扉のガラス越しに人影が映った。

「おいおい。あいつ、ここまで来たのか……」

「スズさん、あいつって……?」

 ゴン、ゴンと扉に衝撃が走る。奥の人物が、ドアを思い切り殴りつけているようだ。

「追いかけてきたらしい。向こう側の世界から」

 次の瞬間、ドカンと音をたて扉がしなり、前に倒れた。奥に立っていたのは、スズに吹き飛ばされたはずの、あの警備員だった。

「見ツケタゾ、転生者」

 傍らには、田中先生が倒れていた。くぐもった声を発した警備員は、スズに躍りかかった。

「しつこいな、何度来ても無駄だ!」

 警備が勢いよく繰り出した拳を、スズが右手で受け止める。真城は目の前の出来事に、あっけにとられていた。

「2度モ同ジ手ハ喰ラワナイ」

 警備がにやりと口元を歪める。すると、彼の手元に、黒い円形の文様が浮かび上がった。

「何――」

 文様が光り輝くと、スズの右手が氷に包まれた。氷は手から腕、肩、胴とどんどん浸蝕していく。

「嘘だろ……」

 真城は尻をついた。ついにスズの全身は氷に包まれ、大きな氷塊と化した。彼は、動かなくなってしまった。


 



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