第4話 転生者の消失
「おいスズ、いないのか。返事しろよ、おい!」
ごつごつとドアをたたく。しかし、ホグワットの森に、ノックの音は溶けていった。
スズの家に着いてもう30分経つ。あいつは時間を守る男だったのに、一体これはどういうことだ。今日はミヤモの手伝いに行くはずだったのに。
木々の隙間から見える太陽は、すでに真上近くまで登っている。
スズのことは気がかりだが、これ以上ミヤモを待たせるわけにもいかない。レンガ造りの家に背を向け、川の方へ歩き出す。
すると、突然目の前が光に包まれた。
おもわず後ろへ飛び退く。とっさに弓をかまえ、光の中に生じた空間の裂け目に向け弦を引いた。
中から現れたのは、銀色の鎧を着こんだ人物。胸の刻印は、まごうことなき帝国軍のエンブレムだった。
「武器を下ろしてください」
帝国兵は落ち着いていた。私は弦を緩め、矢を筒に納めた。
「帝国が、こんな辺鄙なところに何のようだ?」
「それは言えません。」
彼の背後から、銅の鎧を纏った兵士たちがぞろぞろと出てきた。50人以上の軍勢によって、スズの家のまわりは、あっという間に帝国軍だらけになった。
「何があったかは知らないが、平和な森の中に来るにしては、だいぶ大げさな人数じゃないか」
「これは先発隊にすぎません。」
最初に出てきた銀の鎧の帝国兵が、何やらジェスチャーを送る。兵士たちは、ずかずかと家の中に上がり込んでいった。
「おい!」
「おとなしくしてください。場合によっては、あなたにも協力してもらう必要があります」
矢筒に手をかけた私を見て、彼は語気を強めた。
「だから、何があったか説明しろといってるんだ」
「それはできません。ただ、非常事態ということには間違いないのです。」
銀色の帝国兵を睨むが、相手は表情ひとつ崩さない。他の兵士たちは、家の外壁やら庭の畑やらを、プライバシーなどお構いなしに調べていた。
家の中から出てきた兵士の1人が、こちらに近づいてくる。
「中には誰もいません。」
誰もいないだと。スズはどこに行ったというんだ。
「やはりそうか……」
銀の兵士の顔が曇った。鋭い視線を私に向ける。
「この家の住人、スズキトシヒコは、昨日この世界から消えました。」
私のまわりを、帝国兵が取り囲んだ。
「協力してもらいます。あなたに拒否権はありません。」
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