第14話 闘争本能
「砲撃準備! グールの奴らを海に沈めてやりな!」
「「オオオオォ!」」
アレクの指示で海賊達は雄叫びを上げ、あともう少しで戦いが始まる。
「奴らが離れたってことはグールも砲撃の準備をしてるってことか」
「敵を倒すには船を潰した方が楽だからな 向こうがその気ならこっちも乗るしかないね」
「俺は何をしていればいい」
「奴らの砲弾を撃ち落とせ タイミングは俺が教える」
「難易度高くないか?」
「な〜に聖剣の力があれば楽勝だろ?」
簡単に言ってくれる。まだあまり慣れていないのにそんなことできるのだろうか。
最も選択肢は一つしかないが。
「やれるだけやってみるか」
「期待してるぞ?」
「だからするな」
「なあなあ! オレ様は何してればいいんだ?」
「お前さんは連絡係だ 奴らの船に気づかれないように近づいてグールの情報を伝えてくれ」
「責任重大だな……」
「お前ならできるさ」
そう言うとチビルに通信機らしきものを渡す。
アレクの言葉に自信がついたのかチビルはグール達の方に飛んでいった。
「グールの奴らに一発ぶちかましたら次は接近戦だ 船の被害に気を取られてる隙に奴らを叩く」
「船長! 奴ら砲撃の門を開き始めました!」
「よし! 出番だリン!お前の力見せてやれ」
「軽く言ってくれる」
拳に力を込めるとそこから炎が燃え上がる。炎は瞬く間に聖剣へと姿を変えた。
「さあて……今の
闘争本能に火が灯る。先程までやる気が出なかったというのに、聖剣を出している間は戦う事に怖れは消え失せる。
グールな海賊船から砲弾が放たれた。全部で六発、確実にこちらを狙ってきている。
聖剣に意識を集中させと、聖剣は炎を纏う。
前に放った時とは違い、炎が塊のようになるのではなく、炎で刀身が伸びる。
「三……二……一……今だ!」
「『
聖剣を横に振りかぶると、炎の刃が砲弾めがけて勢い良く放たれる。
すると砲弾は空中で一刀両断し、爆発した。
「良し今だ! 放て!」
次はこちらの番だ。アレクの指示で砲門から轟音を放ち、砲弾が放たれる。
一度砲撃を放った後だと次の砲撃には時間がかかる。そこを突けばこちらの攻撃が当たる可能性高い。思惑通りにことは進んだようだ。
「チビル! 状況は!?」
敵の船は煙に包まれこちらからはよく見えない。こういう時のことを想定していたのだろう。チビルに渡していた通信機に連絡する。
『ヒットヒット! 五発中四発命中! グールの奴ら慌ててるぜ!』
通信機からチビルの声が聞こえた。攻撃は無事命中したようだ。
「畳み掛けるぞ! 目標はグール! 奴らに引導渡してやれ!」
「「ウオオオオォ!」」
アレクがグールの船に向かって持っていたカットラスを向ける。
海賊達は雄叫びを上げ戦いへの士気をあげた。
「ナイスアシストだったリン!」
「このまま船が潰せればよかったがな」
「その意気だ」
聖剣の事について少しわかってきた。
戦い方が理解できる。聖剣から伝わってくるこの感覚は、賢者の石の力なのだろうか。
「俺らの船を奴らの船にぶつける! 衝撃に備えろ!」
「「ハイ!」」
「今から……じゃ遅いかな」
再び聖剣を横に振り炎の刃を飛ばす。煙の中から砲弾がいつの間にか放たれていたのだ。
先程と違い近くで砲弾が爆発したため、船が爆風で揺れる。敵も黙ったままではないということか。
「よくやったリン! お前らも油断はするなよ!」
「調子乗るなよリン! オレだって気づいてたんだからな!」
「張り合ってる場合か」
「この距離だと銃の範囲内だ! 気をつけろ!」
「待っていられんな」
「お前何やってんだ!?」
そう言うとリンは突然飛び降りた。近づいてはいるが普通に考えれば、この距離では跳んでも届かない。
だがそれは『普通』に考えればの話だ。
「『
すると聖剣から勢いよく炎が噴射される。まるでミサイルかのようにリンの身体が船に向かって跳んで行き、そのまま船へたどり着いた。
「よう黒ひげ さっきぶりだな」
「聖剣使い……!」
「なんだよ 欲しがってたオレがわざわざ出向いてやったんだから感謝してほしいところだぞ?」
船にたどり着くと、すぐに海賊に囲まれた。
敵の本拠に来たのだから当たり前だが、それにしては人が少ない。おそらくさっきの砲撃で怪我をしたか修理に行っているのだろう。なんにしても都合がいい。
「フン! 一人でくるとはずいぶん威勢がいいなぁ? 聖剣使いのリン様は?」
「様付けで呼ばれるのは未だに慣れんな」
「余裕ぶっこいてんじゃあねえぞ!? テメェは包囲されてんだからよ!」
「撃ってみろよ?」
自分でもすごいことを言っていると思う。だが『何とかなる』という根拠のの無い自信がふつふつと湧いてくる。
「渡すのは死体でも構わん! テメェらそいつを撃ち殺せ!」
「「イエッサー!」」
海賊達は一斉に引き金を引く。銃口から弾丸が発射されるがそれがリンに当たることはなかった。
「『
聖剣から炎を燃え上がらせ、リンがその場を一周回ると炎の壁が弾丸を阻んだのだ。
その壁はその場に止まらず、海賊達のもとに迫る。
「にっ逃げろ! 焼け死ぬぞ!」
海賊達は次々に海に飛び降りて火から逃げていく。
これで邪魔者もいなくなった。聖剣をエドに向ける。
「残りはあんただけだ」
「わっわかった! 俺はあんたから手を引くよ死にたくねえ!」
エドは両手を上げて降参する。体格に似合わないその姿は少し笑えてくる。
「本当だな?」
「本当だ! なんだったら俺が持ってる宝をあんたに上げてもいい! これでどうだ!?」
なんとも情けない。こうもあっさりだと拍子抜けだ。
「ほら!? これなんてどうだ? この瓶の中身はな……こうなるんだよ!」
突然液の入った瓶を投げつけられたかと思えばそれは爆発した。
「ハッハッハッハッー! どうだ!? エド様特製爆弾の味は!? 調子乗ってるからこうなるんだ!!」
エドは勝ち誇り大笑いした。至近距離でダイナマイト並みの爆発を受ければ無傷では済まない。むしろ死んでいて当然だろう。
「さあて死体は残ってるかなあ? 証拠がなけれりゃ信じてもらえねえからな」
だが倒れているはずの男はそこに立っていた。
それどころか目立った外傷が見当たらない。
「この服すごいな 今ので破けないなんて」
「テメェなんで!? 何で無傷で!?」
「相性が悪かったな」
聖剣を天に向けると、纏っていた炎が大きな炎の塊となる。
「
「まっ待て! 待てくれ! 話せばわかる!」
命乞いなど聞こえなかった。ただ目の前の敵を倒すことしか考えられない。
「『
その一撃はエドに直撃した。
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