第22話 自分がまず成ろうよ
ㅤㅤㅤㅤㅤ―― Side
――
届いたスマホのメッセージ。
いやいや香子さん、それは無いですよ。
一人で行くとか正気ですか?
本当、危機感が無さ過ぎて困る。
これは急いで
「わたしは君の気持に答えられない。それじゃあ、もう話しは終わりで」
わたしは
「待ってください!!」
「何?」
「えっ?」
呼び止められる可能性を考えてたから即聞く。
「あ、あの、もう少し! もう少しだけお話しさせてください!」
「悪いけど! わたしもう行かないと」
少し強く言ってしまった。
これ以上話す事なんてわたしにはないからね。
「どうして! ようやく見つけたのに!」
何か叫びだした。
「良いんですか
「はぁ?」
「だって、女性同士なんですよ? 周りに気持ち悪いって言われるんですよ?」
「へー? それで?」
「っ! なんで? ・・・・・・なんで
「興味ない。じゃあそう言う事で」
「へ? いやでも・・・・・。でも!
「平気? 平気とかそんなんじゃない。許すか・許さないか、だ。そんな奴ら片っ端から睨みきかせる。言葉や態度に出さなきゃ良い、出すなら容赦しない。
「なんですかそれ・・・・・」
行こうとしていた所を完全に止められた。
相手の思うつぼで癪に障る。
「どうして
これ八つ当たりパターンじゃん。
付き合い切れない。
正直言うと、あっそ、って感じだけど、でもこの手の子は実際に何か行動に移すバイタリティーが高い。
わたしの対応次第で
話しをせざるをえない。
くっそ。
ホント、彼女の思惑通りか。
「ズルいって言われてもね」
「だって、好きになった人に告白したら気持ち悪いって言われるんですよ! それが噂で広がって、皆に白い目で見られるんです! 陰口叩かれるのはまだ良い方で、イジメられる事だってあるんですよ!? それが同性を好きになった人の宿命なんです!! だから・・・・・・だから! そんな目に
「一緒にされてもさ」
「それです! なんで
「それ、わたしにも言えない? わたしも同性を好きっていうの
「そ、そんなの屁理屈です」
「は? 自分が言った事は理屈が通ってると思ってるの?」
「うっ、そういうつもりは、ただズルいって思っただけです!」
「わたしたちは別にズルなんてしてない」
「こんなの・・・・・・、理不尽です」
「貴方の環境がそうでわたしたちの環境が違って、それが理不尽だったからって、わたしたちには関係ないよね?」
そっちの方こそ理不尽ってもんだ。
「でも、あたしは
「そうだね、でもそれは仕方ないんじゃない?」
「でもやっと、同じ人に出会えたと思ったのに」
「えー? でもわたしの事好きになったのはわたしと
「そ、それは今回話ししてて途中でそう思っただけで・・・・・・」
「告る相手に恋人いるんだから告るにしてもフラれるの覚悟でするもんでしょ? その上、それで相手が受け入れた時は二股される覚悟・させる覚悟、もう付き合ってる相手の方の対応とかそれを受け止める覚悟、とか別れさせるならそれにも覚悟がいるよね? 君は覚悟どころか、その辺全然考えてないみたいだけど、そんなんじゃ付き合えたって、どの道同性同士なんだから、周りに気持ち悪いって言われるのは変わらないのに、その辺も考えてないよね? 覚悟が見えないんだよな」
「覚悟ってなんですか・・・・・・」
「それは人それぞれだろうけど、少なくとも、自分が辛い思いしたからって他人に八つ当たりしたりしない、とか」
「う・・・・・・」
「好きな相手を守る覚悟とか」
「相手を・・・・・・ですか」
わたしは勿論だけど、
人目につかない所でのスキンシップもキスも、わたしが思ってたよりずっと周りの目を配慮してたんだろうって今更ながらに気付く。
あの時は、恥ずかしくはあったけどわたしがあまり隠す事を意識してなかったから
結局それが思わぬ波状を生んだ。
わたしだって同性同士で付き合うんだから、周りが良く思わなかったり、何か言われたりするかもっていう覚悟はあった。
それも甘かったんだろう。
わたし自身が、同性同士が付き合う事を歪だと感じていたのだから。
けどまさか自分に他に好きな人がいるとか思われて、身を引くためだったとは思わなかった。
そうやって
どんなに自分を殺す事になっても。
それと比べたら、いや比べたらいけないのかもしれないけど、やっぱり比べてしまう。
自分だけ辛いなんて言うのが気に食わない。
まあ、置かれてる立場は違うんだろうけど。
付き合わなかったとしても、それが周りに知れたら、 “同性に告白された人” って周知される。
良い評判は立たないだろう。
わたしの事を思って身を引くほどだ。
ただわたしと
わたしを含めて、周りへの隠蔽を周到にしていた訳だ。
わたしは
基本、直感任せだし。
もっと考えれる思料深くなりたいけど、こればかりは不向きだろう。
なら何事も感づけるように感を研ぎ澄ますのが良いのだろうか。
ていうか、という事は、今回の呼び出しも
わたしと付き合う前からその可能性を考えていた?
ちょっと男について警戒心が無い気がするけど、
いや、
わたしも良いとこ見せないと!
取り合えず今の煩わしいのを、なんか良い感じに纏めてとっとと終わらそう。
え?
良いとこに見えない?
勝負は別の場所だ!!
「折角付き合えたのに周りに気持ち悪いって言われて別れるの? 自分も傷ついてるかもしれないけど、付き合ってる相手だって傷ついてるのに別れて更に傷つけるの? わたしはそんな事したくない」
「そ、それはそうかもしれませんが皆が皆、そんなに強くないんです!」
「同性と付き合うのやめたら、周りもそれやめてくれるの? やめてくれないよね? 一度知られたんだから周りの考えが変わるまでずっと気持ち悪いとか言われ続けるんじゃないの? それなら別れなくても同じじゃないかな?」
「だから・・・・・・別れる気はない、と」
「うん」
ていうか、わたしなら周りを黙らせる位するけどね?
「あたしもそんは事言ってくれる人に巡り合いたかった」
「いや、自分が言う立場に成ろう。いや、自分 “も” かな?」
「え?」
「そんな相手に巡り合わない? ならせめて自分だけでもそのつもりで相手を守ってあげて、相手にも守ってあげたいって思わせようよ」
「そ、そんな上手く行きませんよ」
「そうだね、でも覚悟を決めたら自分自身の周りの見方が変わるよ」
「あたしの見方が・・・・・・」
大体、相手の事を考えないで告白とか意味わからん。
好きな相手だろ?
なんで好きな子のその後の事とか考えてやってないの?
って言っても恋なんてそんなものなのかもな。
異性ならそこまで考えないで済むのかもしれない。
同性だからの問題で、直面するまで解らなかったってのもあるのだろう。
「ね? だから、自分がまず成ろうよ? 守る人に、守れる人に」
わたしたちの場合これからその洗礼を受けるのかも。
どんな事があったって受けて立つ気でいるけどな!
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