第23話 なんで泣いてると思った
ㅤㅤㅤㅤㅤ―― Side
――二年の
オマケに、何故か
脅しは確かに私へ向いているけど、内容は
これが同性同士で付き合う事で生じる壁と言うのなら世間と言うものは、よくよく厳しい物だ。
ただ、正当性の感じない物に屈する気は更々無い。
しかし、この先輩、何を言っても聞き入れる気はないらしい。
正論でも暴論で返してくる。
元より、脅迫などする様な人だから、思考もルール無視を平気でするのだろう。
これは困った。
「どうすんだよ。あんたのせいで大事な恋人がイジメられるのに、それを知ってて自分のわがまま通すとかズルくね?」
私が言い淀んでいる事で、優位な立ち位置になったと思ったのか
そんな言い方されて誰が言う事を聞くと言うのだろう。
寧ろ反発されるね。
私もその一人だ。
「勿論彼女一人の問題ではないですから。私も立ち向かいますので、貴方にとやかく言われる筋合いはありません」
「そ、それがあんただけの意見なんだろうが」
「その辺にしておけよ」
話しはやはり平行線、と思っていたら第三者が割って入った。
「お、お前! か、関係ない奴は黙ってろよ」
「おたくこそ、関係ねーだろ」
「俺は今コイツと話してんだ」
「話してる内容はその子とその子の彼女の事だろ? おたくに関係ねーじゃん」
えーと、私を置いてけ掘りにして話し出したのは、二年の先輩。
この間の週末に会った先輩Cだ。
「俺が話しかけたんだから関係あるだろ」
「それが何でおたくと関係ない者同士で付き合ってる恋人に別れろとか強要してるんだよ?」
「俺はイジメられないように忠告を」
「余計なお世話だろ。おたく、この子と付き合ってる彼氏でもねーじゃん?」
「っな! つ、つうかお前にも関係ねーだろうが!」
「だろ。だから関係ない奴、つまりおたくとおれはお呼びでないってこった」
「っ~」
「じゃ、そう言う事で」
先輩Cが無理矢理話を終わらせ私を回れ右して、あんな奴置いて、行け行け、と背中を押してくる。
「っ! ふざけんなよ! お前の何の権利があるんだ! おい
「完全に脅しじゃねーか」
「違っ! 俺はコイツの事とを思って言ってやってんだ! コイツの彼女がイジメられてるから彼女の為に別れてやれって」
「うわ~何様だよ」
先輩Cも呆れ気味だ。
私も呆れ気味だが、折角先輩Cが割って入ってくれたのに、それでも話しが永遠終わらない気がしてきた。
でもそこに最愛の人現る。
「
「っ、一人で行くとか、警戒心無さ過ぎ」
「ごめん
「で、こいつが手紙の?」
「おい! 話しに勝手に入ってくんな!」
「いやまた違う人」
「?」
「手紙くれた人とは話つけたよ。その帰りにこの人に呼び止められたの。こちら二年生の
「ふーん。私の為に別れろって言われてるのが聞こえたんだけど」
「てかおま、あの一年どうしたんだ」
「あ、この先輩、
「は? いつ?」
「さっきじゃないかな? 私と会う前」
「一対一で、どちらか一方的でもない話しでイジメになるの?」
「いや俺がそう見えただけ・・・・・・」
私と
でも、嘘で良かった。
「キジマ先輩? わたしが喋ってた相手、一年生だって解るんだ?」
「そ、そりゃサンダルの色で解んだろ?」
「ふーん?」
?
多くの高校では、学年ごとにリボンの色だったり体操服の色だったりが違ったりする。
うちの学校もその一つ。
ただ、学年が変わっても色は持ち越しだ。
他所は一年生・二年生・三年生での色分けで、学年が上がれば次の学年の色に変わる所もあるらしいけど、うちは一年の時にその色になったら三年間一緒。
と、話は脱線したけど、杵島先輩の言う通り、サンダルの色で学年が解る。
後は体操服と、醜いけろ襟につける校章が色違い。
リボンの学年別の色違いはない。
「
何だろうと思ってると、
「・・・・・・泣いてない」
「え?」
何が?
「
なんで泣いてると思ったのかな?
「? なんで?」
「悪い男に詰め寄られて、怖い思いして、酷い事言われてたんじゃないの?」
まあ、概ね合ってるけど、流石に泣くほどじゃない。
いや、母を中傷された時はちょっとウルっと来たけど。
そう思い至ると
「やっぱりちょっと泣いたんだ?」
「いや、ちょっとグッと来ただけだよ? 涙は出てない」
「おれはさっきから何を見せられているんだ・・・・・・」
「
「え?」
「んん?」
「は?」
「泣かせたな?」
あ、怒りが
メラっと炎を宿した眼で睨んでる。
なんか無理矢理な感じでしたけど?
「おい待てって。本人も泣いてないつってたろーが」
「でもあんたに詰め寄られた事と、怖い思いさせられた事と、酷い事言われた事は否定されなかった」
「いや全然怖がってなかったし酷い事なんてしてねーよ」
「結局脅迫でしたよね? 言いふらされたくなきゃ俺と付き合え? とか、
「へー?」
「いや、そ、そんなつもりはねーよ?」
「じゃあもう話しは終わりで良いですよね?」
「は? 終わってねーって」
「いや終わってんだろ」
この期に及んでまだ話しを続けようという根性凄いね。
すっごく面倒くさい。
「わたしたちは別れたりしない。
ただ声が凄く重低音なのと、男子でしかも二年の先輩が
「お、おお、解った・・・・・・から」
さっきまで話しが全く通じなくしつこく続けようとしたこの先輩をビビらせるなんて、ここは是非恋人として顔を確認しておきたい。
そっと顔だけ前に回り込ませてみたけど、気づかれたのか
惜しい、見損ねたか。
「くそっ」
「その辺にしとけよ(二回目)」
「るっせーよ。お前
「覚えといてやるけど、とりまさっきの会話、録音してあるかな」
「は?」
「おれが会話に加わる前からのやつ。おたくがこの子と会話してる所からな」
「な!?」
先輩Cが笑顔でスマホを
固まる先輩。
を、置き去りにして去った後。
「あの野郎、しつこいから気をつけろよ」
と、声を掛けられた。
週末に会った・・・・・・先輩Cさんだ。
「「先輩。こんにちは」」
「お、おお。こんちは。君ら随分呑気だな」
「えと、しつこいんですか?」
「ああ」
「あ、先輩。助け舟出してくれてありがとうございました」
「あんま役にたたかなかったけどな」
「いえ助かりました!」
「わたしからも、ありがとうございました。わざわざすみませんでした」
「なんもやってねーっての。それに、そっちの子、あいつに全然負けてなかったしな」
「へー」
「まあ、何を言ってもダメな感じで、正直困ってました」
「それな! おれも困っちまったよ。でも君には
「ナイト・・・・・・そうですね」
「!」
可愛い・・・・・・。
「それよりあの野郎、おれらが一年の時は
「はぁ」
「それが、えーっとそっちの子、君に乗り換えたってこった」
「あ、
「
「あ、わたしは
「イケメン一年が
ボケだろうか?
つっこむべきだろうか。
でもイケメンは合ってる・・・・・・?
「あの野郎ぜってー顔で選んでやがるな。つうことで、まあ気をつけろよ? 何かあったらおれか生徒会に言やいいから。って、何かあってからじゃ遅いわ。身の危険感じたら即、即な」
「え、は、はい。ありがとうございます。
「お気遣いありがとうございます」
「まあ脅しておいたから多少大人しいと思うけどな」
じゃあ、と言って
どうやら絡んできた相手はちょっと厄介な相手らしい。
はぁ、面倒な。
あの会話の成立しない感は非情に厄介だ。
何よりああいったウザいの私は嫌いだし。
まあ、会話は私もこっそり録音アプリ使って録音してたから、法的に証拠にならなくても、心象には十分に訴えられる物として使えるだろう。
いざと言う時に使うから、折角
正論や理屈で話し敢えて解り合えない人もいる。
勿論それは何に対してもある事で、今回は私たちの同性同士の付き合いに対して直面しただけの事。
非情に不快な思いをしたけど、これからの人生で必要な経験を今しただけなのだと思って不快感に蓋をする。
何時かこの経験が役に立つ様に。
それから
途中、例の手紙の人とのやり取りを
ごめん。
後、最後ちょっと恰好良かったよ。
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