第16話 今度こそデート回なんだけど

ㅤㅤㅤㅤㅤ―― Side なつ ――



――こうとのデート。


以前付き合った時はこれと言ってお出かけとかしてないから、思えば今回が実質初デートだと思う。


服装はやっぱカッコよくありたいからカッコイイ系で固める。

家を出てこうと再開。


おお、長袖Tシャツにワンピース、シンプルだけど可愛い。

いや何来ても可愛いんだけど。


素直に褒めると照れるこう

うん、超絶可愛い。


あれ?

ちょっとリップにグロス?

唇がプルンプルンです。

これは誘われてると思っていいですか?

勿論こうにそこまでのつもりが無いのは解ってるんだけど・・・・・・。

ただ可愛く着飾った、そんなとこだろう。

可愛いけどちょっと理性が・・・・・・。


そんなこうからはわたしはカッコ可愛いと褒められた。

嬉しいんだけど、可愛いは余計だよ。

カッコイイだけで良いのに。



そんなやり取りして電車で複合商業施設に向かう。


とりま体を動かそうとボーリングを提案する。

まあ反対もされないと解ってるけど。

久々のボーリング、こうと二人だけは初めてかもしれない。

友達とだったり家族とだったりでなんだかんだと二人きりなんて、無かったな。

折角だし張り切っちゃおう。

ボーリングってやっぱり振り下ろした後玉が手を離れる瞬間が気持ちいいよね。

床と平行に放れた時とか特に。

私は16ポンドの玉を選らぶ。

重量重視。

イメージはリニアモーターカーみたいに浮いている様に、もしくは氷の上を滑る様に、床の摩擦抵抗を受けない様に投げる。

それでいてピンにあたった時に衝撃やらで軌道が逸れるのを防ぐ為に重さを乗せる。

ピンが当たる頃には回転でピンに当たった衝撃を消す様に。

なんだかんだ言ったけどほとんど感覚。


わたしの投げた玉は正にイメージ通り、滑る様にレーンを真っすぐ飛んでいき、ピンをモノともせずに弾いていった。

何ていうか自分で言うのもなんだけど、“超重量級の暴力” 的な何かみたいだね。

その点こうはまともだろう。

わたしだって自分がまともでないのは多少自覚してるからね?

こうは基本に沿った感じの投げ方で、色々微調整をして精度を上げてくる。

それ程でない運動能力を充分に補ってくる。


スコア188か。

過去いちだろう。

こうも驚いてるけど凄いと素直に褒められた。

こうの前だからと張りきっ甲斐があったと言うものだ。




「こんにちは」


ボーリング場でスコア表を貰って喋っている時に突然声を掛けられた。

見ればなんとなく見覚えのある人。

わたし達が通う高校の生徒会長だったかな?


「こんにちは。天ヶ瀬あまがせ先輩」

「こんにちは。生徒会長」


わたしは思い出せないから生徒会長呼びなのに対し、こうは『天ヶ瀬あまがせ先輩』と呼んだ。

そうだ、そんな名前だった。


「こんにちは。若槻わかつきさん、神楽坂かぐらざかさん。今は学校の外だし、お互いプライベートだし、どっちも敬称は要らないわよ」


え?

生徒会長様はわたし達の名前知ってるの?

まさか全校生徒覚えてるんじゃ?


その後合流した生徒会長のお連れである先輩達の騒がしい事。

ビックリするくらいテンションが高い。

でも気を効かせてくれて、少し話し込んだけどなんだかんだと立ち去ってくれた。


そこでわたしは思い出した。

今日聞いたこうに道を尋ねる輩の話し。

生徒会長に報告しておけば必然的に学校に報告したのと同じだろう。


「あの、すみません」


去っていこうとしていた先輩達を呼び止めて走り寄って生徒会長に話しかけた。


捺 美なつみ「ちょっと報告したいことが」

天ヶ瀬あまがせ「何かしら?」

捺 美なつみ「あの、実は、最近なんですけど、こうが一人でいる時、通学中に何度か道を尋ねられたそうなんです。毎回違う人らしいんですけど」

天ヶ瀬あまがせ「学校の周りよね? そんなに解り辛い道だったかしら?」

捺 美なつみ「いえ、直ぐ近くにコンビニありますし、ちょっと行けば大通りで、大通り単純に進めば駅にたどり着きます」

天ヶ瀬あまがせ「そうよね、学校の周辺は碁盤目になっててそれ程迷う様な所じゃなかったわよね」

先輩 C「ただのナンパだろ」

先輩 A「だよねー」

先輩 B「流石噂の一年生、モテるね~」


生徒会長じゃない別の先輩が口をはさむ。

わたしもそう思ってました。


天ヶ瀬あまがせ「本人の反応は?」

捺 美なつみ「なぜわざわざ道を聞いてくるのか疑問に思ってるみたいです」

天ヶ瀬あまがせ「道以外の話しは?」

捺 美なつみ「駅の場所などを聞いてくる人を含めて、皆コンビニの場所を教えて立ち去ったとかで、それ以外の話しはしてないみたいです」

天ヶ瀬あまがせ「そう、まずますの対応ね。でも、ただ道を尋ねたかっただけにしろ、ナンパにしろ警戒は必要そうね。生徒会と学校と、そうね保護者にも呼びかけて今後対策を取って行きましょう」

先輩 A「素直にお茶しに行きましょう、とか誘えばいいのに」

先輩 B「ただしイケメンに限る」

先輩 C「今しおごりでも行かんわ」

先輩 B「相手イケメンだった?」

捺 美なつみ「知りません」

先輩 B「残念」

先輩 C「なぜお前が残念がる」

先輩 B「うちの一年と付き合えば必然と私たちの目に入るかもしれない。目の保養」

先輩 C「目の保養が欲しけりゃ隣の美人(生徒会長)でも見とけ。それか目の前にもいるだろイケメン一年が」


イケメンかどうか判んないけど目の前にいる一年ってわたししかいないよな。

わたしを巻き込まないで欲しい。


天ヶ瀬あまがせ「我が校の王子枠なら貴方でしょ。因みに神楽坂かぐらざかさんは次期王子枠ね」


マジか。

てか何だ王子枠って。

うちは普通に共学なんだから男子から選んでやれよ。


先輩 A「だよねー」

先輩 C「え? おれが王子枠だと? マジか」

先輩 A「知らんかったんか」

先輩 B「君は黙ってればイケメン(女性だけど)」

先輩 C「ちょっと可愛い子ナンパしてくるわ。例えばあそこにいる子(こう)とか」

捺 美なつみ「通報しました」

天ヶ瀬あまがせ「そうね、私も証言するわ(味方します)」

先輩 C「受けてたつ」

先輩 B「イケメン警官ならばっち来い!(通報で駆け付けた警官を想定)」

先輩 A「君らは何と戦ってるんだ」

天ヶ瀬あまがせ「冗談はさて置き、今度から道を聞いてくる人がいたらいつでも通報出来る用意をしておくと良いわね」

先輩 A「スマホ持って、あとワンポチで警察にかかるようにしとこ」

先輩 C「あと防犯ブザーとかな」

捺 美なつみ「はい、こうと相談します。ありがとうございました」

先輩 C「ところで、君らマジで付き合ってんの?」

先輩 A「それ! ナイス質問!」

捺 美なつみ「え、と。ええはい・・・・・・」

先輩 A「おお! マジだったんか!」

先輩 B「何それ! 羨まけしからん!」

先輩 C「青春してんなーw」

天ヶ瀬あまがせ「ほら、失礼でしょ。もう行くわよ」

先輩 C「じゃ、まあ頑張れよ。い・ろ・い・ろ」

先輩 B「だよねー、これからだよねー。ワタシら邪魔って・・・・・・、むふふ! じゃさいなら~」

先輩 A「ばいばーい」

天ヶ瀬あまがせ「じゃあ気を付けなさいね。さようなら」

捺 美なつみ「さよならです」


騒がしい先輩達と話しを終えてこうの元に戻る。

イヤらしい想像されてそうだけど、応援されてる感もあってそこは素直に嬉しい。

同性同士という偏見がなさそうだし、いい人たちそうだ。



ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ≫≫≫≫≫≫



その後、早めに昼食をとる事になった。


今の内に夏休みのこうの予定を埋めておこう。

取り合えず、海に誘う。

泳ぐのは余り乗り気でなさそうだけど川ならいいみたいだ。

折角ならこうの水着姿が見たいので泳ぐのは外せない。

海でなくても川でもプールでもこの際、家の庭でビニールでもいい。

泳げる川さえあればいい訳だし、泳げる川に泳ぎに行く案が通った。

やったね。

こうは海に行く案も別の形で提案してきた。

泳がなくてもビーチで遊ぼう、と。

ふむ。

ビーチバレー、ビーチサッカー、ビーチフラッグス!

こうはわたしと勝負になるのを懸念している。

運動能力が断然いいわたしに軍配が上がるのが目に見えているからね。

わたしも手加減はしてるんだけど、根が真面目なこうは何でも全力とまで言わなくてもそれなりに頑張るんだよね。

必死になるこうの姿は可愛いから、つい意地悪をしたくなる。


食事を済ませてウインドウショッピング。

わたしもこうも欲しいものはないと言うのでぶらぶらと回る。


こういう時、相手に可愛い服を選んで着せ替えて楽しむのが定番なんだろうけど、残念ながらわたしのファッションセンスでは可愛い服が選べない。

こうが着れば可愛い服だと解るんだけど。

なんとなく見て回るだけになった。



出入り口の看板に移動動物園が来ているというので見に行く。

動物と戯れるこうは間違いなく可愛いだろう。

ふれあいコーナーではウサギやモルモットと戯れるこう

うん間違いない。

スマホで写真撮っとく。

わたしもこうに誘われてふれあいコーナーに入って動物を触る。

ヒヨコは可愛い。

だけど、大人の鶏は苦手。

小学生低学年の頃、こうが(私ではなく)飼育係で掃除していた時、鶏に襲われたこうが膝を爪で肉がえぐれる位の怪我をしたのを見てから、私は大人の鶏が怖い。

いや、こうの為なら鶏くらい、いざとなったら戦えるよ?


<そんな “いざって時(鶏に襲われるシチュエーション)” なんてそうそうないよ(by こう


あの時は私は飼育小屋の外にいたし、一瞬の出来事で何も出来なかっただけで。

大泣きしながら先生を呼んだくらい。

寧ろ、何でこうは平気なんだろう?



体験コーナー。

なぜ敢えて蛇なんだろう。

イエローパイソンなる蛇を首に巻いて、正確には肩に乗せて蛇に感心するこう

なんで平気なんだろう。

だってあんなに大きんだぞ?

蛇がその気になれば人間の首なんて簡単に絞められる筋肉してるんだぞ?

小さい蛇も油断できないけど。

あの鎌首もたげて噛む瞬間は高速で顔が飛んでくる。

わたしなら避けれるかもしれないけどこうじゃ無理だ。


でもこうが可愛いから写真は撮るけどね。



こうを堪能して帰路につく。

え? そこは動物をじゃないのかって?

勿論こうをです。

だって、移動動物園だって、こうは動物触りたくて寄ったんだろうけど、わたしは動物触って喜ぶこうが見たいなって思って寄ったんだし。

100%下心です、はい。


帰りの電車は混んでいたのでこうを守る形でわたしの腕の中に入れる。

片手でつり革を持ちもう片方の腕をこうの腰にまわしてるのは勿論故意です。

両手が空くようにリュックタイプのカバンにして正解だった。

こうの顔が近い。

これ揺れたら頬にキスしちゃうかも。

されるのもいいね。

満員電車万歳!

いや待て!

他の奴もこうに近いじゃないか!

やっぱ満員電車はいけない。

うーん、電車は今後の課題だなー。


電車を降り、駅からは徒歩。

名残惜しいけどもう家だ。

明日は学校なので今日はこうの家には泊まらない。

わたし達はキスをしてそれぞれの家に帰った。

キスだけじゃなくもっと・・・・・・、という気持ちもある。

でもこれからも続くんだ。

今日だけで終わらないから。



これから続く毎日が楽しみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る