第15話 先輩方との遭遇編
ㅤㅤㅤㅤㅤ―― Side
――私たちのデート中での事。
ボーリングを終えた時。
「こんにちは」
不意に女性に声を掛けられた。
声をかけてきた女性が誰か確認する。
私たちが通う高校の生徒会長の
美人で成績優秀で、どこかの社長令嬢らしいと有名。
「こんにちは。
「こんにちは。生徒会長」
「こんにちは。
「「はい、
私たちの名前知ってるんだ。
凄いね生徒会長。
因みに
「フフ、こんな所で有名な一年生二人に会えるなんて
「有名?」
「・・・・・・」
「それにしても凄いわね、さっきの」
「ああ、
「わたし?」
「凄い玉投げてたわね。男顔負けだったわ」
「そ、そうですか?」
「うん。そうだね」
「もう、連れの子たちなんてキャーキャー騒いでたわ」
「キャーキャー?」
「お連れがいるんですか?」
「ええ、今皆お手洗いに行ってるけど」
「あ、一人で来てるボッチなんて思ってませんよ?」
思ってませんよ?
「解ってるわよ。でも私は一人でもボーリングに来れるわよ?」
「え、そうなんですか?」
「へー、凄いですね」
「私からしたら何が凄いのか解らないわよ」
生徒会長はどうやら鋼鉄のメンタルの持ち主。
「それより、
「・・・・・・はい」
「勿体ないわね」
「そうだよね」
「皆、そう言いますけど、部活に打ち込むほどの気概がないもので」
「そうなの?」
「まあ、部活になるとそれなりに真剣さを求められるものね」
「そういうのがちょっと苦手なんです。遊びでするのはいいんですけど、部活って、特に運動部ってそういうのがダメじゃないですか」
「そうだね」
「そうね。うーんと、解らなくも無いけど、生徒会としては学校の逸材を埋もれさせて置くのもちょっとね」
「それにその時間別に使いたいですし」
「?」
「あら」
別に使いたい時間、そう言う事ですか。
うう、恥ずかしい。
「
「私は運動能力良くないので足を引っ張るだけです」
「ボーリングで100も出してたら十分だと思うわよ?」
「そうなんですか?」
基準知らないから良いのか悪いのか解らない。
取り合えず、友達の中で188なんてとってるのは
「フォームも綺麗だったし、悪くないと思うわよ」
「うーん、私も大会とか出る程打ち込みたくないんですよね」
「そうそう。でも生徒会長としては文化部に入って欲しいんじゃないんでしょ?」
「まあそうね。・・・・・・いえ此の際、文化部でも良いんじゃないかしら」
「変な妥協ですね」
「何かしら部活に入れたいんですね」
「生徒会としてはね」
「生徒の自由意思を尊重してうちの学校は部活が強制じゃなかったはず」
「あれ? 今はプライベートだと言ってたような」
「あら、そう言えばそうね。ごめんなさい。この話はここまでね」
助かった。
部活なんて入ってたら色々大変だからね。
そういうのに打ち込むのも悪い訳じゃないけど、私はしたくない。
こう見えても家の事を任されているので家事で忙しい、というのは建前だけど。
部活の話が終わって良かった。
「因みに、
「私? 私は51だったわ」
「え」
「え!?」
生徒会長のまさかのスコアに、私と
聞くんじゃなかった。
本人に聞いたの
普通の数値を知らない私でも友達同士の中で聞いた事無い数値だ。
「玉が重くって」
と、指を差したのは6ポンドの玉が置かれた棚。
ここで一番軽い玉で、6と7は主に子供用。
「え!? 6で重いんですか!?」
「これって子供用ですよ!? 指入るんですか!?」
「指は入るものが探せばあるわ。ただ指同士の間隔が狭くて持ち辛いけど」
そらそうだ。
「寧ろ軽すぎて投げ難いのでは!?」
「ボーリングって玉の重さで転がす事に意味があるのでは・・・・・・・。あ、これ言うとさっきの
「いえ、もう手の筋が痛いわ」
「何ゲームしたんですか?」
「1ゲームよ」
「え」
「え?」
生徒会長は運動以前に運動するあらゆるものが足りてないみたい。
「別にひねってねん挫したとかじゃないわよ?」
「投げ方の問題かな?」
「フォームかも」
「言う程フォームは悪くないと思うわ。連れにも確認したし。何というか、後ろに振り上げた時とか、振り下ろした時に指の限界を感じるのよ。指から抜けて真下に落とさない様にするのって大変じゃない? あれで手の甲の筋が痛くなったわ」
「そうなると指の力・握力の問題かな」
「
「そうだね。全部振り子だと思うよ。最初後ろに振り上げる時も、一度下に落とす反動で上に引き上げてるしその後も、落ちていく勢いを下に引っ張って加速させつつ前に誘導する感じで、それ程握力を使ってる事意識してないかな」
「成程」
「
私は運動能力それ程良くないからね。
上手く出来ない時はなんでかつい考えちゃう。
なんとなくこうすれば上手くいきそう、みたいな事言ってるから。
「ただの振り子だし、理屈が正しいかどうかは知らないよ」
「まあ、
「今度その辺り意識して試してみるわ」
「いや、他の人に使えるかどうか解りませんよ」
「まあまあ、試してみるぐらいはいいんじゃない?」
「私も
なんか、私のやってた事を試すとかとんでもない話しになってく。
「失敗しても知りませんよ!?」
「その時はその時よ」
「意外と豪胆ですね」
「流石生徒会長」
「 “生徒会長” は関係ないでしょう?」
「いや、生徒会長なんてなる人はこういうものかと思い知らされました」
「褒められてるのかしら?」
「褒めてます」
「褒め言葉です」
「まあ! 貴方達が部活に入らないのなら生徒会に勧誘しようかと思っていたのに」
「私たちには荷が重いです」
「そうそう、器じゃありません」
「そうでもないでしょう」
あれ、これは部活勧誘より厄介な方向に向かってるのでは!?
でもその流れをぶった斬って貰えました。
先輩 A「あー!
先輩 B「ホントだ! やださっきのイケメン! って彼女持ちじゃん!」
先輩 C「
先輩 A「マジか! あたしらも混ぜろ!」
先輩 B「やだ
先輩 C「全員女だけどな(笑)」
先輩 A「なーんだ」
先輩 B「こんな時まで会長様してないで遊ぼうよー」
先輩 C「こん子らうちの一年だろ? よっしゃー先輩がおごっちゃるからどっかしけこもうぜ?」
生徒会長の連れと言うのが戻ってきたみたい。
戻ってきた三人テンション高いな。
生徒会長もノリが良いな。
先輩 A「こんにちわー!」
先輩 B「こんちゃー!」
先輩 C「オッスオッス!」
まだいるんだ。
先輩 A「あー。ジュース買おっかって話しになったんだけど、誰かがアイス食べたいって言い出して、アイスの自販機探しに行ったー」
先輩 B「アイスは腹に溜まらんから大丈夫大丈夫」
先輩 A「そういう問題では無い気がする」
先輩 C「いやいやアイスは飲み物」
先輩 B「む? なんかワタシらの事悪く言われている気がする」
先輩 A「なになに何の話?」
先輩 C「それよりこいつら
先輩 B「あたしは本気だぞ!?」
先輩 A「ほえ?」
先輩 C「おれも」
先輩 C「それに声かけたのは
先輩 B「自分を棚に上げて!?」
先輩 A「そーだそーだ!」
先輩 B「
先輩 A「酷いわ!」
先輩 C「まあ実際おれらうるせーしなw」
驚くほど騒がしい先輩たちだ。
先輩 A「それな!」
先輩 C「そう言われちゃーしゃーねーよな」
先輩 B「なにー!? ワタシらが邪魔だとー? ちょっと表出ろやー」
あ、ちょ、
それは悪手。
先輩 A「え?」
先輩 B「否定しない!? 寧ろ肯定・・・だと!?」
先輩 C「マジか」
先輩 A「え? 本当にデートなの!?」
先輩 B「比喩じゃなく?」
先輩 C「ほうほう」
ニヤニヤ見てくる先輩方。
なんか色々バレた感じ。
先輩 A「じゃあ、お二人さんごゆっくり~」
先輩 B「デート楽しんでね~」
先輩 C「駅裏(繁華街)に行くんじゃねーぞー?」
私たちをひやかしながら先輩らは離れて行く。
「あ、ちょっとすみません!」
「? 何話したの?」
「生徒の防犯について」
「??」
今度道を聞かれたらスマホ持って通報出来るように警戒しようって事らしい。
そこまで!?
まあ、警戒ぐらいならして損はないもんね。
しかしけたたましい・・・・・・騒がしい先輩方だった。
嵐だったね。
まだボーリングしてかしてないけどドッと疲れた。
なんか上機嫌だ。
「凄く騒がしい先輩たちだったね」
「生徒会長ら色々凄かったね」
「それと最後、私たちの事バレたみたいだけど、主に
「ごめん、バラしちゃった」
「ヤバい人たちにバレちゃったのでは!?」
「大丈夫だよ」
「何を根拠に」
「あの先輩ら理解ありそうだし」
「そうかもしれないけど」
「それに、うちの学校のカーストトップだし」
「あー・・・・・・」
確かに生徒会長とその友人たちと言えば、うちの学校の図式をピラミッドに表したとしたら頂点かもしれないけど。
何故彼女らに解るようにしたの?
「それよりデートの続きしよ」
「うー、なんかはぐらかされてる気がするー」
「まあまあ」
うーん、母にも言ったけど、この道を選んじゃった以上進むつもりでいる。
周りにバレてしまたって貫くしかない。
今後の学校生活に影響出そう。
何を言われても良い様に、気を引き締めないと。
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