第二部 まったり行こうよㅤ―― AFTER STORY ――ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

第13話 今迄と少し違うお出かけ

<補足>登場人物 氏名

若槻わかつき こう

神楽坂かぐらざか なつ


こう母:若槻わかつき じゅん

なつ母:神楽坂かぐらざか 咲美えみ

ㅤㅤ================ㅤㅤㅤㅤ================



ㅤㅤㅤㅤㅤ―― Side こう ――



――それから。


なつが泊まった翌土曜日。

朝食を終え私たちはソファーでくつろぎ、いきなりの抱擁ほうようなつが満足するまで黙ってされてた。

気を取り直して昼食、でもその後もダラダラと寛いだ。


一緒に過ごさなかった一か月程の間の、これといって取りとめない話しをした。

登下校中に、何故かよく道を聞かれた、とか。

これ私なんだけど。

もう後数百mも進めばコンビニがあるのでそこで聞いてください、とコンビニの方を指さして去ったんだけど。

本当、直ぐ近くにコンビニあるんだから利用しようよ。

なつの話題は元彼の話し位しかないから自重するって。




「今日はこれからどうする?」

「んー? まったり過ごせば良いんじゃない?」

「そうだね」

「明日はどっか行こう」

「良いけど、何処か行きたいの?」

「デートしよ、デート」

「デ、デートか。うん良いよ」


明日の日曜日はデートする事になった。


今迄遊ぶのも何処か行くのも大抵行動を共にいてたから、結局付き合ってもその延長でしかない様な気がしてたけど、改めてデートって言われると嬉しいやら恥ずかしいやら。



取り合えず土曜日の今日はまったり過ごす。

お昼、適当にあり合わせを作って一緒に食べてまたソファーでだらだら。



少しウトウトしていたらなつにクッションを取り上げられて、抱きしめてきた。

今度な何だろう?


「クッションの代わり」


だそうだ、何の事だろう。

や、でも温かいから意外と気持ちいい?

人の温もりって良いね。

勿論なつだからだけど。

他人の温もりなんて不快でしかない。


と、・・・・・・それより眠気に勝てない。

ちょっと、・・・・・・夕べ夜更かししたし、ね。

折角なつと一緒にいるのに、もっと話したいのに・・・・・・。


・・・・・・すや~。


うっかり寝てしまって気付けば夕方、なつは今日も泊っていくと言うのでそのままイチャイチャして過ごす。


夕飯を食べた後、なつは一旦帰って着替えを取りに行った後は、まあ、一緒にお風呂入ったり、・・・・・・色々しました。



ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ≫≫≫≫≫≫



翌、日曜日。

一旦家に帰ったなつと合流後、駅へ向かう。

デートという事でそれなりに着飾ってみたんだけど、新品と言う訳でもないのでなつも見たことある服のはずなんだけど、可愛いと褒められると素直に嬉しい。

なつの恰好はシャツにパンツスタイル。

カッコ可愛い。

って、褒めたらなんか釈然としてなかった。

何でだろう?


電車は、押し合いへし合いにならない程度には混んでた。

通学は徒歩圏内の高校に通っているから普段電車にはあまり乗らない。

今日は数駅先の複合商業施設へ向かう。


ここに来るのはいつも友達複数人で来ていたからなつと二人きりというのは初めてかもしれない。

デートって事だしちょっとドキドキするね。


取り合えず身体動かそうってなつが言うからボーリングをする事になった。


なつはなった16ポンドの玉が、転がすと言うより滑る様にして弾丸よろしくピンに飛んでいく。

回転が見られません。

ピンを軽く轟音ごうおんを立てて奥にぶつかった。

数レーン先の人まで何事かとこちらを見ている。

後ろの方でもちょっと騒ぎになってる。

とんでもなくパワフルだ。

いや、直球ど真ん中の見事なストライクという素晴らしい結果ですけどね。

野球みたいに言ってるけど野球と違ったストライクですよ勿論。

16ってここで一番重たいものですよ?

あちらの男性でも14とかにしてますよ?

私?

私は10です。

可も無く不可もなく、です。


私に奥まで直球ストレートを投げる腕力? はないので普通? に転がす。

途中でカーブする弾が先頭のピンを捉えるように投げる。

2ゲームを終え最高スコアは、私が103、捺美は188。

うん、解ってたけど大差をつけられたね。

てか188って何?


なつは私と身長や体重はそれ程変わりはないのに力では敵わないんだよね。

運動能力も良いし、なんで運動部に入らなかったんだろう。

勿体ない。



それから、ボーリングが終わったタイミングで声を掛けられた。

見たら私たちが通う高校の生徒会長。

何事か注意を受けるのかと思ったら、なつの運動能力を見て部活に入っていないには勿体ないという勧誘だったけど、なつは断った。

運動能力も良いし、なんで運動部に入らないんだろうとは思ってたけど、なつにはなつの考えがあるんだろし、二人の時間も減っちゃうし、勿体ないとは思うけど、口出しはしない。

生徒会長や、そのお連れの賑やかしい先輩方と少し話して別れた。



「お腹減ったしご飯食べよ?」

「そうだね。そうしよう」


時間は12時前、これからは混む一方だろうから、少し早いけど今行った方が空いてるかな。

なつに流されるままに併設する飲食店が並ぶ所に移動した。


私たちはファミリーレストランに入る。

専門店よりは色んなのが選べるから。

家で普段食べれないものを食べようという事で、私はサーモンとイクラのクリームパスタ、なつローストビーフ丼。

頂きます。


・・・・・・食事中、


「今度海行きたいよね。いつもは皆で行くけど今度は二人だけで」


なつがそんな事言いだした。

今は6月初頭。


「遊びに? 泳ぎに?」

「んー、どっちも」

「泳ぐのなら川のが良いな。海水ってべたつくからちょっと嫌」

「泳げる川が近くにないね」

「ないね」

「じゃあ夏休みに遠出して泳げる川行こ」

「良いよ。じゃあ海には海水浴場じゃない所の浜辺で遊ぼう」

「ビーチバレー!」

「ただの遊びが途中から勝負になる予感。私が負けるのが解る」

「ビーチサッカー」

「同じだよね?」

「ビーチフラッグス!」

「完全に勝負しにきてるよね!? 私が負けるのが目に見える・・・・・・。ビーチバレーでもビーチサッカーでも良いから遊ぼ? ただ遊ぼ?」

「えー、取れないボールを必死に拾おうとするこうが可愛いんじゃーん」

「ドSか」

「Mのが良い? こうになら攻められても良いよ(ビーチバレー・ビーチサッカーで)」

「絶対無理なの解ってて言うー」

「あはは」

「普通に遊ぼ?」

「まあ、程々にー」

「大丈夫かこれ」

「ウソウソ、普通に遊ぼう」


って感じで、バカなやり取りやりつつ二人の予定が二人で埋まっていく。

良いねこういうの。



それより食事。

イタリアンって量多くない? 

創作和風? パスタだけど。

結局私が少し残したのはなつが食べた。


ええ、彼女は丼物食べてましたよ。

ええ、普段から食事量がちょっと違います。

・・・・・・何も言うまい。




午後はショッピングセンター側へ。

これと言って欲しい物がある訳じゃないのでひやかしながら巡る。


今後デートを重ねるなら、なつと一緒に行って買った服を着ていくか、なつといない時に買ってなつが見た事ない服を着ていくか悩むね。


外の広場で移動動物園が来ていたので立ち寄る。

ふれあいコーナー。

ウサギが可愛い。

こういうの見るとペット欲しくなるよね。

お母さんが反対するから飼えないけど。

なつも子供らに混ざってヒヨコを掬う。

可愛い(なつが)。

ヒヨコにご満悦だが、別コーナーにいた足に鎖をつけた大人の鶏にはビビるなつ

可愛い。

私は体験コーナーで蛇を首に巻いてもらった。

ひんやりしてうろこはつるつる。

なつに写真を撮ってもらった。

ただ意外に見えるかもしれないけど、なつは蛇も怖がって近寄ろうとすらしなかった。

平気そうに見られるんだけどね。

可愛い。


移動動物園で動物以上になつに和んだ。



気付けば6時過ぎ。

お互い門限はないけど、逸脱した行為をしないという信用・信頼の元に成り立っているものだ。

壊す訳に行かない。

じゃあ、そろそろ帰ろうか、とどちらからともなく足を駅に向ける。


帰りの電車は行きより混んでた。

なつが私の前に立って庇ってくれる。

でも、なんかすっぽりなつの腕の中にいるんだけど?

顔に息がかかるくらい近いだけど。

しかもお互い向かい合ってるから顔が本当に近い。

あれ、満員電車ってこんなんだっけ?

ドキドキする。

周りの雑踏が嘘の様に消え、私の心臓となつの心臓? の音だけ聞こえる。

そんな気がした。

気付けば降りる駅で、なつの誘導されながら電車を降り駅を後にした。


静かな住宅街を手を繋いで歩く。

幾ら薄暗いと言っても街灯がある。

女子同士で手をつないで、恋人つなぎで歩く。


何時か誰かに否定されるかもしれない関係。

でも、もう手放せないものがあるから。

私は前を向いて歩く。



今迄と少し違った関係。

今迄と少しずつ違う毎日。


これからの期待が不安を上書きする。

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