第124話:家族会議

「子供が多過ぎても揉め事の原因になるかもしれない。

 男兄弟が九人なら寂しい事もないだろう。

 レイラ、ライラ、ローザには早く子育てから離れてもらって、大事な役目を果たしてもらいたいと思っているんだ」


 リカルド聖帝が突然話しだした。

 本人は長い間をかけて考えた事だったが、三人には突然の事だった。

 だから三人ともとても驚いていた。

 だがリカルド聖帝が拙速に何かを始めたりしないのは分かっていた。

 熟考の末に決めた事なら話を聞くしかないと思っていた。

 

「今直ぐという訳ではないが、魔族の国に攻め込もうと思っている。

 俺が最も信頼する三人に子供達を預けて、魔族の国に遠征したい。

 だがどう考えても魔族の国は二つあるようだ。

 だから一国相手に優勢に戦っていても、背後をもう一国に襲われるかもしれない。

 だから三人には強大な魔力を与えて戦えるようになってもらおうと思う。

 魔族の大軍を圧倒するほどの魔力を持つことになる。

 とても人とは思えない存在になってしまう事になる。

 それでもいいか考えてみて欲しい。

 もしかしたら元の普通の人間には戻れなくなってしまうかもしれない。

 俺が生きて戻れたら、元の普通の人間に戻してあげられる。

 だが俺が魔族の国で死ぬようなことになったら、元に戻してはあげられなくなる」


 リカルド聖帝が考えに考え抜いた事だった。

 だがそんなリカルド聖帝の考えをローザは一蹴した。


「リカルドが考えに考えた結果なんだろうけど、話にならないね。

 そんな身勝手な考えには同意できないよ。

 だってそうじゃないか、状況から子供はもう十分だって。

 ちゃんちゃらおかしいね、女の気持ちを一切考えちゃいないじゃないか。

 確かに私は子供はどちらでもいいよ。

 リカルドが欲しいなら産んでも構わない。

 リカルドが欲しくないなら無理に産もうとは思わない。

 だが他の二人は欲しいかもしれないんだぞ」


 確かに今回はリカルド聖帝の独断が過ぎた。

 大陸と魔族の状況を考えて、史上初めて魔族の国に攻め込む決断だ。

 何かを犠牲にするのは当然だというリカルドの考えも分からない訳ではない。

 だが、だからといって、妻子の想いを踏み躙っていいわけがない。

 特に今は魔族に攻め込まれているわけではない。


 魔族を撃退して束の間とはいえ平和な時期を迎えているのだ。

 その平和な時期に魔族の国に攻め込むから子供を諦めろと言われても「はいそうですか」とは内心思えない者が大半だろう。

 相手がリカルド聖帝では、普通の者では面と向かって意見も反対もできない。

 それができるのは妻であるレイラ、ライラ、ローザの三人だけだ。

 それが分かっているからこそ、あえてローザは憎まれ役を買って出て、正面から反対意見を口にしていた。

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