第109話:元勇者ロイドとアイル
アイルは選び抜いた密偵と共に南部同盟支配地域に潜入していた。
元勇者ロイドが拠点としている都市に潜入しようとしていた。
元フィエン公爵家の者達は、仇討ちに燃えていた。
だが猜疑心が強いロイドが拠点としている都市だけあって警戒が厳しい。
よそ者が入り込むのはとても難しい。
特に四将軍が反逆してからは極端に警戒が厳重になっていた。
「なあ、何とかしてくれよ。
このままではリカルドの憶病者にいいようにされちまう。
お前の国も滅ぼされて平民にされちまうぞ。
俺に兵力と軍資金さえ任せてくれれば、リカルドなど簡単に討ち取ってやるよ。
俺にお前を護る力をくれよ」
ロイドは某国の王妃を籠絡していた。
歳を重ねて容姿の衰えた王妃は、もう国王に相手してもらえない。
まあ、そんな時には愛人を作るのが王侯貴族の常識だ。
適当な報酬を与えて美男子を囲う。
最初ロイドは勇者の名声と鍛え上げた身体、野性味のある容姿で老齢の王妃や貴族夫人を籠絡した。
更に特殊な媚薬を使って一度関係を持った王妃や貴族夫人を虜にした。
虜にした王妃や貴族夫人を使って今度は若くて美しい令嬢まで毒牙にかけた。
ロイドが南部同盟を締結させて権力を握れたのには、実は媚薬の力だった。
極悪非道なロイドが使う媚薬だ。
当然人格を崩壊させてしまうほどの常習性がある。
ロイドに毒牙にかかって完全に中毒にされた女達は、媚薬、いや、悪性毒物欲しさに言いなりになってしまっていた。
だが南部同盟各国の権力者達も馬鹿ばかりではない。
中には優秀な者もいる。
愛情のない王妃や夫人がどうなろうと知った事ではないが、自分の身は大切だ。
リカルド王太子に対抗するために騙されたふりをしていた者が、ロイドの悪業を各国の権力者に伝え、リカルド王太子に寝返るタイミングを計っていた。
「ギャアアアアア」
ある権力者が送り込んだ女密偵は毒物に対する耐性を持っていた。
敵に捕らえられ、逆スパイやダブルスパイにされないように、幼い頃から多くの毒物を与えられ耐性を付けられていた。
強烈な毒を与え続けられる密偵候補たち。
だから集められた孤児や奴隷の子供は百人に一人も生き残れない。
ロイドと同じように悪逆非道な権力者だった。
そんな女密偵がロイドの局部を噛み千切った。
ロイドが一番無防備になる時を狙った決起だった。
ロイドが各国の王妃と貴族夫人を集めて乱交し、媚薬中毒を続けようとする時を狙って、全てを表に出し南部同盟を崩壊させるための策だった。
「おのれ、死ね」
ロイドはそれでも元勇者だ。
普通の戦闘では房事用に鍛えられた女密偵では相手にならない。
それなりの武芸は会得していたが、最後には斬られて死んでしまった。
だが女密偵は満足そうな笑みを浮かべていた。
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