第60話:陰謀三・ローザ視点
今回の件は、私とライラの連名で国王陛下に訴状を送った。
国王陛下が止めようとしても、拷問を止める気はない。
万が一黒幕が国王陛下だったとしたら、どのような手段を使ってでも、私達が確保した貴族達を解放するか殺すかするだろう。
傭兵をしていたら、依頼主に裏切られる事などよくある事だ。
その時には、勝てるのなら報復に依頼主を殺して金銀財宝を奪う。
勝てないのならサッサと逃げ出すことが生き延びる秘訣だ。
「やあ、ローザ、ライラ、今回は負担をかけてしまったね。
後の事は何も心配いらないから、全て私に任せてくれればいいよ」
私達が王都に手紙を出す前、内容を吟味して書いている段階で、リカルド王太子殿下がウェルズリー城から帰還された。
レイラ皇女を歓待しているはずなのに、放り出してきたのだろう。
本来ならうれしい事なのだが、笑顔の下にある怒りの大きさに恐怖すら感じる。
何度も死線を掻い潜って来た私とライラが、その場に崩れ落ちそうになるほどの激烈な殺気に、コンラッドとバートランドが火のついたように泣き出してしまった。
「あ、ごめん、直ぐに出て行くから、訴状はそっちでも出しておいて。
俺からも出すけど、そういうモノは多ければ多いほどいいからね」
泣き出した子供達をあやす私とライラに申し訳なさそうに話しかけながら、リカルド王太子は慌てて部屋から出て行った。
自分でも殺気が抑えられていない事に気がついたのだろう。
私とライラはリカルド王太子が部屋から出て行ってようやく恐怖から解放された。
それは元女傭兵の近衛徒士や戦闘侍女も同じで、一斉に大きな息をついた。
可哀想なのは戦場経験のない普通の侍女達だった。
彼女達が失禁しているのは見て見ぬフリをしてあげよう。
流石に失神している子は介抱するしかないのだが、恥ずかしいだろうな。
それからのリカルド王太子の動きは目を見張るほど激しいモノだった。
直接拷問に加わるような事もなければ、拷問現場に行くこともない。
だが、父王や皇帝が黒幕にいるかもしれないのに、拷問を止めようとはしなかったし、何かあった場合の準備も怠りなかった。
毎日二つの魔境近くにある農地を巡回して、莫大な量の穀物を創り出された。
魔境の落葉や土を直ぐに運べるところでなければ、リカルド王太子の魔力をもってしても収穫直後に地力を回復できないので、他の農地では毎日穀物を収穫することができないからだ。
リカルド王太子は十分な兵糧を蓄えつつ、フィエン城、アクス城、アイル城、カウリー城、ダドリー城に駐屯する全騎士全徒士全義勇兵に侵攻準備を命じられた。
リカルド王太子は、黒幕が父王や皇帝でも容赦なく殺す覚悟なのだ。
その怒りの大きさに震えあがったのは私やライラだけではない。
この問題は、激しい拷問で腐れ貴族達が全てを話すまでに、大陸中に噂として知れ渡っていた。
貴族達が嘘偽りの告白をしないように、拷問は時間をかけて繰り返し徹底的に行われていたから、噂が広まるのに十分な時間がかかっていたのだ。
もしかしたら、今後同じ事が起こらないように、リカルド王太子がわざと時間をかけて噂を広めたのかもしれない
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