第58話:陰謀一・ローザ視点
「ダドリー伯爵夫人、私達が味方になりますから、どうかご安心ください。
次男とは申されても、コンラッド様はリカルド王太子殿下とダドリー伯爵夫人の間に生まれた御子、将来が楽しみな才能豊かな王子様です。
皇国の血統だとはいっても、フィフス城にも迎えてもらえないレイラ皇女など恐れるに足りません」
さっきからペラペラと阿諛追従を繰り返す腐れ外道共が。
私の礼儀作法がなっていないと、フィフス城内で陰口を叩いている事は、王太子の密偵から知らせを受けて知っているのに、よく言えるな。
常に後方に隠れて最前線で戦わない卑怯者共。
傭兵団にいる時から、世の中で一番嫌いだった糞蟲共。
直接命をやり取りする敵よりも大嫌いだった連中、今直ぐにでも殺してやりたいが、何を企んでいるか聞きだす必要がある。
「リカルド王太子殿下が心から愛しておられるのはダドリー伯爵夫人だけです。
カウリー伯爵夫人もリカルド王太子殿下に可愛がられておられましたが、最近はそれほどでもないと漏らしておられると、近衛の者が言っておりました。
もしバートランド王子が流行り病で亡くなるようなことがあれば、リカルド王太子殿下の寵愛は一気にダドリー伯爵夫人に傾きます」
この腐れ外道共が、私を唆してバートランドを殺させる心算か。
絶対に許さん、皆殺しにしてやる。
だが、問題はこの謀略を仕掛けた黒幕がいるかどうかだ。
私にバートランドを殺させて、その罪で私とコンラッドを殺す。
そうすれば王位継承の邪魔になる庶子がいなくなる。
こいつらの後ろにレイラ皇女がいるかもしれない。
レイラ皇女が直接関係していなくても、皇国が暗躍しているかもしれない。
哀しい事だが、ペンドラ国王やモーラ王妃がやらせている可能性もある。
「ですが流行り病などかならず起こる事ではございません。
今はダドリー伯爵夫人に傾いている寵愛も、いつレイラ皇女やカウリー伯爵夫人に傾くか分かりません、その時のために準備されてはいかがですか。
何もフィフス王国内に拘る事はないのです。
リカルド王太子殿下にさえその気になっていただければ、周辺国を併合するのが簡単なのは、ウェルズリー王国をわずか一日で併合した事でも明らかです。
カウリー伯爵夫人が、コンラッド様のために国が一つ欲しいとリカルド王太子殿下に囁かれたら、次の日にはかなう簡単な事でございます。
ペンドラ国王陛下には私達がお知らせしますので、何の心配もございません」
こいつらはいったい何が言いたいのだ。
私にバートランドを殺させて私とコンラッドを始末したいのではないのか。
私に王太子を唆させて、こいつらに何の得があるというのだ。
王国では役職に就けない、家柄だけが自慢の無能貴族だと聞いたが、話の焦点が全く分からんぞ。
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