第35話:内紛
この大陸は首都に人口が集中しているわけではない。
面積当たりの収穫量が少なく貴族の力も強いので、民は地方に分散している。
小国の首都では人口が一万に満たない国もある。
首都の人口が十万を超えるような大国は、皇国を含めて片手で数えるほどだ。
フィフス王国では、傭兵や義勇兵という名目の貧民を大量に受け入れてはいるが、その多くは魔境との境目に屯田されている。
馬出曲輪に大量の義勇兵を受け入れてはいても、人口は三万ほどだった。
「愚か者共が、これでは亡国の前兆ではないか」
ペンドラ国王は思わず内心の怒りを口に出してしまっていた。
ペンドラ国王の腹案では、公妾の生んだ子供は男女に関係なく、誕生して直ぐに臣籍降下させ、伯爵位と領地を与えてしまう心算だった。
そもそも大陸では正室の子供以外に王位継承権はない。
庶子がいても、傍系王族の正室が生んだ従兄弟や甥に王位が行くものなのだ。
それを、権力欲に憑りつかれた連中が刺客を放ったことで、戦時では最もあってはならない民の暴動を引き起こしてしまっていた。
「皇国がこの国を見捨てるかもしれない。
それとも、魔王軍に対抗するために駐屯軍を置こうとするか。
いや、皇国も魔王軍遊撃隊の対処に困っているから、放置してくれるか」
ペンドラ国王はこの事態にどう対処すべきか決断がつかなかった。
基本的に皇国は侵略を企むような国ではないし、国境を接するどころか遠く離れた国に野心を持つ事はないと思っていたが、絶対ではない。
皇子や有力貴族のなかに、飛び地を求めている者がいるかもしれない。
謀叛を警戒され、権力や領地を制限される傍系皇族になるよりも、遠隔地の王に成りたいと思っている一派がいるかもしれないと恐れていた。
「陛下、大変でございます、殿下が、リカルド殿下が」
「なんだ、リカルドがどうかしたのか。
まさか、公妾を庇って死んだのではないだろうな」
ペンドラ国王はあまりの恐怖に心臓が止まりそうになっていた。
この現状でリカルド王太子が有力貴族や大臣が放った刺客に殺されたら、ペンドラ国王が黙認した、あるいはやらせたという噂が国内を駆け巡るのは明らかだった。
王太子騎士団はもちろん、王国騎士団も国王に剣を向けてくるのは明らかだ。
それを好機と考えて、野心ある貴族が謀叛を起こすのも明白だった。
もうこの国は滅ぶ、ペンドラ国王は半分諦観の気持ちになっていた。
「いえ、そうではありません、殿下は謀叛人どもを皆殺しにされました。
それもたった一人で、民が囲んでいる有力貴族と大臣を皆殺しになされました」
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