第34話:蜂起
国王から使者に指名された近衛騎士長は、配下の近衛騎士十騎と近衛従騎士十一騎に勅命の内容を伝え、十一班に広く分かれて王太子の元に行こうとした。
王都から延びる東西南北の四つの街道に分かれて、刺客から逃れようとした。
しかも途中から脇街道も使い、早さよりも確実に伝えようとした。
いや、刺客を誘い、裏にいる有力貴族と大臣をあぶりだそうとした。
だが有力貴族と大臣もそんな事は理解していた。
だから使者への追手も公妾の刺客も、幾重もの段階を踏んで犯罪者ギルドに依頼しようとしたのだが……
「さてと、全て白状してもらうぞ、誰から依頼を受けた」
王都にある犯罪者ギルドの拠点が急襲された。
有力貴族や大臣が自分達が使うために残していた犯罪者ギルドだが、王都の守備を任されてる第五騎士団と、非常時には治安維持と城壁防備を受け持つ自警団は、リカルド王太子の命を受けて犯罪者ギルドの拠点を全て調べ上げていた。
近衛騎士隊から今回の件を知らされた第五騎士団と王都自警団は、全ての犯罪者ギルドの人の出入りを見張っていたのだ。
そして刺客が暗殺に出向いたのを確かめて、証人を確保するために蟻の這い出る隙もない状態にしてから急襲したのだ。
「へん、へっぴり騎士に捕まる俺たちじゃねえよ」
「ふっ、愚か者が、殿下のお力を舐めるなよ」
犯罪者ギルドの幹部は抜け道から逃げようとしたが、見張りや途中の罠同様に、一瞬で無力化されその場に昏倒した。
リカルド王太子は第五騎士団の前線での戦いを見て、信頼に足ると思った第五騎士団の騎士には、魔力を奪う魔道具を貸し与えていた。
その魔道具で魔力を奪われた罠は作動しなくなるし、人間は魔力切れで昏倒してしまう、凶悪な武器なのだ。
「直ぐに全員を確保しろ、殿下の愛しい人を殺そうとした極悪人だ。
裏にいる有力貴族や大臣を処罰するのに証人にしなければならん、殺すなよ」
王国騎士団に所属する者が全員清廉潔白なわけではない。
中には腕はあるが品性愚劣なモノもいた。
そんなモノは、当然だが有力貴族や大臣に近づいて悪事を見逃してもらおうとしていたが、最前線でリカルド王太子に魔術でその性格を見抜かれて、王太子騎士団に転属させられている。
腕があるのだから、戦力が必要な時に追放したり殺したりするのは無駄で、最前線で魔獣狩りをさせればいいと、リカルド王太子は考えていたのだ。
「大変でございます騎士隊長殿、民が蜂起して有力貴族と大臣の屋敷を取り囲んでおります、いかがいたしましょうか」
ここに来てリカルド王太子や国王の想定を超える事態が起こってしまった。
二人とも、公妾が殺されてリカルド王太子が兵を挙げた時には民が蜂起すると思っていたが、リカルド王太子に刺客が放たれたという噂が流れ、それに反応した民が蜂起するとまでは考えていなかったのだ。
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