第24話:政略結婚・ペンドラ国王視点
正直に言えば、とても複雑な心境だ。
アセリカの裏切りで、リカルドが女性嫌いにならなくて本当によかった。
普通に女を愛することができると確認できたのは、本当に喜ばしい事だ。
だがその相手が、元女傭兵なのはいただけない。
普通の場合なら強く注意して別れさせる。
それでも別れないのなら、密かに女傭兵を始末する。
だが今のリカルドにそんな事をしてしまったら、女嫌いどころか人間嫌いになってしまう可能性がある。
「本当にその女達の性格は悪くないのだな?」
「それは大丈夫でございます。
幼い頃からリカルド王太子殿下の側に仕えている、フェルデ卿とラウンデル卿が中心となって選んだ者達でございます。
下手な令嬢を近づけるよりもよほど安心でございます。
もし変な令嬢を送り込んでいたら、それこそ殿下が女嫌いになられてしまいます」
密偵の言い方が、アセリカを婚約者に選んだ余を非難しているように聞こえる。
まあ、今の王国では余よりもリカルドの方に信望がある。
偽勇者達の裏切りで、後方支援の大切さを全国民が知った。
その後のリカルドの活躍で、リカルドが臆病者ではない事も証明された。
何よりも大切な後方支援を、功名を捨てて黙々とこなしていたリカルドへの評価は絶大で、もし今後城に籠ることになっても誰も非難しないだろう。
それに比べて余には愚者のレッテルが張られ、家臣達の目も厳しい。
「最前線での事はリカルドに自由にさせてやればいい。
だが流石に元傭兵を王妃にするわけにはいかない。
セント・ジオン皇国とリストン大公国との縁談はどうなっている?」
密偵の話を聞いた後は、重臣達との話し合いだ。
リカルドからの連絡では、魔王軍の第三派第四派の侵攻は確実だと言う。
それに備えるには、国内を固めるよりも国外に味方を作るべきだ。
リカルドが食糧の増産と塩の確保をしてくれたが、激戦の最中に生産を維持するのはとても難しい。
そんな時に頼れるのは縁を結んだ国だけだ。
特にずっと支援してくれている、セント・ジオン皇国とリストン大公国との絆は、もっと強固にしておかなければいけない。
「エルフ族のリストン大公国からは、支援はこれまで通り続けるが、婚姻を結ぶ気はないとエルフ族らしい返事をもらいました。
セント・ジオン皇国では、リカルド王太子殿下が傷心から立ち直られ、再び婚約する気があるのなら、皇女との婚約を決めてもいいとの返事をいただいております」
ノウェル辺境伯ジント、フィフス王国と人族諸国との境目を護る硬骨漢。
大陸随一の魔導士と評判の男だが、偏屈なモノが多い魔導士とは思えない社交的な男で、フィフス王国の外交を有利に導いてくれている。
ジントがいなければフィフス王国はもっと苦境に追い込まれていただろう。
ジントがセント・ジオン皇国と政略結婚を結べるというのなら大丈夫だ。
「余からリカルドに知らせるから、婚約を進める方向で動いてくれノウェル辺境伯」
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