第11話:義勇兵の現実

 特産品の販売で軍資金が確保できたリカルド王太子は、特産品を購入してくれた国で安価な雑穀を大量に購入し、同時にその国で義勇兵を募って、大量の雑穀を輸送してもらうという手段を取った。

 これにより、フィフス王国の特産品を義援購入した国が一方的に損をする事のない、両国が得をする売買がフィフス王国と大陸各国間で始まった。


 ただ最初からリカルド王太子には分かっていた事だが、義勇兵には問題があった。

 応募してきた義勇兵全員が、前線で戦えるわけではなかったのだ。

 武器や防具はないが、頑健な肉体を持つ大人ならばまだましなのだが、そうではなく、孤児や浮浪者などの貧民が、食事にありつけると考えて、大量に義勇兵に応募してきていた。


「並べ、並べ、ちゃんと並べ。

 焦らなくても、老若男女問わず、孤児であろうが浮浪者であろうが構わん。

 一日二食の雑穀粥でいいのなら、義勇労働者として連れて行く。

 騎士団や義勇兵団が魔獣を狩った時は、雑穀粥に魔獣肉が入る。

 約束を守る証拠は、お前達の前に積み上げられた雑穀の山だ。

 お前達が食べる雑穀は、お前達自身に運んでもらうからな」


 リカルド王太子は、フィフス王国の騎士に取立てた元傭兵を、母国やつながりの深い国に派遣し、できるだけ安価に大量の雑穀を購入させるとともに、義勇兵と義勇労働者を募集させていたのだ。

 戦えない者を募集する事を反対する者もいたが、リカルド王太子は最初から積極的に非戦闘員の孤児や浮浪者を集める心算だった。


 前世の記憶に引きずられた、人道主義的の部分がある事は否定できないが、それ以上に労働力不足を解消したかった。

 二年目三年目と時が経つほどに、リカルド王太子の前世の知識が生かされ、生産力が飛躍的に増大するのは分かっていた。

 だが前世の知識を生かすためには、それを実行する労働力が必要不可欠だった。


「うっわぁ、すげぇえええ、今日も雑穀粥に肉が入っている」


 もうアクス城に配属されて一カ月も経つのに、それでも少年は歓声を上げた。

 某国王都の貧民街で、盗みや物乞いをして生きてきた少年は、施しと残飯以外食べた事がなかった。

 それがここに来て以来、一日二食の雑穀粥には大量の肉が入り、いや、雑穀よりも肉の方が多いくらいの食事だった。

 しかも雑穀はお替りできないが、肉だけならばいくらでもお替りできるのだ。

 

 それには理由があって、騎士団が魔王軍の奇襲を警戒して多くの偵察隊を出している事と、その偵察時に魔獣を狩っている事だった。

 さらに義勇兵を鍛錬するために魔獣を狩らせていたので、大量の魔獣肉が確保できていたのだった。

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