第10話:資金稼ぎ
リカルド王太子は、裏切りのショックで取り戻した前世の記憶を利用し、資金稼ぎをしようとした。
傭兵をこれ以上雇うだけの資金も食糧も限界の状況で、魔王軍の侵攻を撃退しなければいけないからだ。
義勇兵を募るにしても、最低限の食糧と装備と消耗品は必要なのだ。
小説などで使われる手法の一つ、石鹸作りには脂が必要になるので、貴重な食料を転用するのは難しかった。
利用できたのは、食用に適さない魔獣脂か松脂だけだった。
綿花を栽培するという方法もあるのだが、綿花を栽培するには多くの肥料が必要になるので、魔王軍との戦いで荒廃した国土では、難しかった。
そこで心を鬼にしたリカルド王太子は、食べることが躊躇われる人型魔族の遺体を、一年かけて肥料とする事にした。
それと今までは普通に捨てられていた糞尿も同じで、一年かけて肥料化する。
仕方なく陶磁器を生産することにしたのだが、その為にはまず陶土探しから始めなければいけなかったので、リカルドは近衛騎士隊に護られて探し回った。
探しながらも、今現在生産している国内品に付加価値をつけることにした。
今の国力で生産できている麻布・綿布・葛布に、自分の知る限りの染色技術を導入し、少しでも高く輸出できるようにした。
各国の王侯貴族や富裕層に対しても、魔王軍との戦争軍資金用と正直に伝え、支援購入を呼び掛けた。
多くの国が無視したが、セント・ジオン皇国とリストン大公国がそれに応え、今までの三倍の値段で購入してくれた。
しかも両国は、購入に反対した他国の貴族や重臣を、魔王軍に内通していると言う噂まで大陸中に流してくれた。
リカルド王太子の不幸に、同情と優越感の両方を感じていた大陸の庶民にとって、リカルドの話題は共通の憂さ晴らしだった。
そして常に権力を振りかざして威張り散らす貴族は憎しみの対象で、貴族の悪口は同じように共通の憂さ晴らしだった。
その両方が組み合わさり、公然と貴族を批判し罵れる絶好の機会を、庶民が逃すはずはない。
瞬く間にリカルドを支援しない貴族は魔王軍の手先と認定された。
人が三人集まれば派閥ができると言われるくらい、人とは愚かな者で、対立し争うのが普通だった。
リカルドを支援しないように動いた貴族にも、当然だが対立する貴族派閥がある。
その対立派がこの絶好の機会を見逃すはずがなく、彼らはリカルドへの人道支援を声高に唱え、敵対派閥を攻撃した。
この流れを受けて、リカルドが手掛けた品物だけでなく、フィフス王国産のモノが全て値上がりした。
「よし、義勇兵を募るぞ」
リカルドはこの流れを見逃さなかった。
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