日本うらめしや~協会の幹部、逮捕
2020年4月30日、午後3時ごろ、神奈川県に在住の星川さん(当時32)がふと顔を上げると、知らない場所にいることに気が付いた。遠くに見える見知った高層ビルを頼りに進んだが、1時間以上歩いても、ビルは近づいてこなかった。時空固定の霊術が使用された疑いがあると見て、幽霊警察は調査を進めていた。
2020年11月16日、同事件を起こした疑いで、神奈川県内に在住の幽霊、七宮ゆかりさん(享年32、現在36)が逮捕された。七宮さんは、うらめしや~運動を牽引する、日本うらめしや~協会の幹部を務めている。七宮さんは、犯行内容について全面的に認め、犯行動機について次のように供述している。
「恨めしい感情は幽霊にあって当然の感情だ。この感情に基づいて行動することは、当然の権利として保護されねばならない」
七宮さんによると、七宮さんは生前、不遇の人生を送った。中学生のころに付き合っていた相手が年若く交通事故で亡くなり、20代で結婚した相手もすぐに病死した。それらの苦痛のあまり、七宮さんは、幸せな人への恨めしい感情を徐々に溜め込んでいった。
30歳を迎える前には、幸せな人が不幸になると「ざまあみろ」と思うようになり、32歳のときに恨めしい感情に耐えられずに自ら命を絶った。幽霊になってからは、恨めしい感情を否定するのではなく、恨めしい感情を全面的に肯定していこうとする、うらめしや~運動のカリスマとして頭角を現すようになった。
「星川さんは、順調な人生を送っていましたがね、わたし、そういう人を見ると、恨めしくなるんで」
そのため、七宮さんは、星川さんを困惑させようと霊術を使用したわけである。日本うらめしや~協会の会員らは、七宮さんを擁護する意見を挙げているが、世間からの風当たりは強い。「幽霊とて、礼節をわきまえるべきだ」との論調が目立つ。
幽霊統計学を研究する赤嶋教授(享年45、現在56)によると、うらめしや~運動に賛成的な立場の幽霊らは、反対的な立場の幽霊らと比較して、不遇な人生を送っている確率が高いことが有意に示されているという。
恨めしい感情への理解は不可欠かもしれないが、恨めしい感情によって行動に出ることは慎んでもらわねばならない。
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