白いカラスに変身
2020年4月12日、午前6時ごろ、茨城県内に在住の年金暮らしの合嶋さん(66)が日課である散歩に出かけていたところ、住宅街にある電柱棒の頂点に白いカラスがとまっているのを発見した。白いカラスは下降し、合嶋さんの眼球をつついて飛んでいった。白いカラスは幽霊の可能性が高い。変身の霊術が使用された疑いがあると見て、幽霊警察は調査を進めていた。
2020年10月22日、午前9時ごろ、同事件を起こした疑いで、茨城県内に在住の幽霊、中越好江さん(享年57、現在68)が逮捕された。好江さんは犯行内容について全面的に認め、犯行動機について次のように供述している。
「どうしても眼球が欲しかったのです。わたくし、ずっと、眼球がひとつ足りないままで生きてきましたので」
好江さんは生前、13歳のときに怪我をして右目を失った。それ以来、右目には義眼をはめ込んで生活を続けていた。幽霊になってからも、義眼のままだった。
「満足に、大きく視界が拡がらないのです。いつも、右の視界だけ見えず、右のほうを見るためには顔を動かさなければいけませんでした。そのたびに惨めな気持ちになったのであります」
好江さんは両眼とも揃っている人たちへの憧れを強めながら、自分の惨めさを強く感じるようになっていった。68歳で病死して以来、幽霊になってから、幽霊社会に霊術が存在することを知った。
「子供のうちにしか霊術は身に着けられないとよく言われましたが、独学で頑張れば、大人でも霊術を身に着けられるという話がありましたので」
好江さんは独学で霊術を勉強し、変身の霊術を身に着けた。
「幽霊のままでは人間に触れることもできないので、白いカラスに変身し、人間の眼球をひとつ奪うつもりでした。その眼球をわたくしの右眼窩に結合するつもりだったのであります。失敗しましたけれど」
好江さんは涙ながらに犯行を語った。以上が、好江さんの犯行の経緯である。
眼球結合の手術を受けるには、医療費が莫大である現状だ。単なる好江さん個人の問題ではなく、社会問題の氷山の一角かもしれない。
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