響く叫び声は
2020年4月10日、午後1時ごろ、広島県在住の高島さん(24)が昼食を食べたばかりのとき、自分の体の中から「ここから出せ!」と幾人もの叫び声が聞こえてくるという事件が発生した。その日が祖母の命日であることを高島さんが思い出してから、叫び声は消えた。記憶の擬人化の霊術が使用された疑いがあると見て、幽霊警察が調査を進めていた。
2020年10月21日、午後6時ごろ、同事件を起こした疑いで、広島県内に在住の幽霊、永島可奈子さん(享年34、現在56)が逮捕された。永島さんは犯行内容について全面的に認め、犯行動機について次のように供述している。
「あの日、高島さんの祖母(享年78、現在81)は、高島さんがお墓参りに来てくれるのを待っていました。それなのに、高島さんは、そのことを忘れていたので、思い出させなければと思いまして」
事件の発生した4月10日、高島さんは、3年前に亡くなった祖母の命日である事実を忘れていた。永島さんは、そのことを高島さんに思いださせようと、忘れられた高島さんの祖母に関する記憶を擬人化する霊術を使用したのである。
「わたしは、幽霊になってから、高島さんの祖母と個人的に親しくさせてもらっていたのですが。高島さんの祖母は、毎年、孫娘の高島さんが墓参りに来てくれるのを自分の墓の前で待っていたのです。それを毎年とても楽しみにしていたものですから、今年に限って、それが途絶えてしまっては、高島さんの祖母を悲しませることになると思い……」
もちろん、霊術の使用が禁止されているのを重々承知なのですが、と永島さんは苦しかった胸の内を明かした。永島さんの霊術使用により、高島さんは祖母の記憶を再帰し、4月10日の夜に祖母の墓参りに出かけている。高島さんの祖母は満足したという。
「あの、絶対に、高島さんのおばあさんには、このこと、言わないようにしてください。それが人情というものでしょう?」と、永島さん。
幽霊社会にも、隠すべき隠し事は存在するようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます