『死滅』の文字
2020年4月7日、午後3時ごろ、熊本県内に在住の島さん(24)が、自宅リビングにかけられたカレンダーの4月7日の枠内に、『死滅』と載っているのを発見した。まるで、『大安』や『仏滅』、『先勝』などの六曜のひとつのように、『死滅』と載っていた。霊術が使用された疑いがあると見て、幽霊警察が調査していた。
2020年5月20日、午後1時ごろ、同事件を起こした疑いで、熊本県内に在住の幽霊、高橋奈緒美さん(享年12、現在34)が逮捕された。高橋さんは、犯行内容について全面的に認め、犯行動機について次のように供述している。
「島さんの寿命が刻一刻と近づいているのに気づいたのです。彼女は交通事故で3か月後に死ぬ運命でした。どうしても、その事実を伝えたく思い、あのような文字をカレンダーに紛れさせました」
高橋さんは、島さんの寿命が縮んでいく現実を、島さんに伝えたかったのである。カレンダーの別日にも『死滅』との文字を入れて、定期的に警告を与えていた。たまたま島さんが気付いたのが、4月7日だったわけだ。
「彼女だけじゃありません。ほかの人たちにも同様のことをしました」と供述しているため、余罪の可能性もあると見て、引き続き、幽霊警察は調査を進めている。
高橋さんの予言通り、島さんは、2020年の7月5日、午後2時ごろに交通事故で亡くなった。そして、今日、2020年10月20日、午後3時ごろ、都内の個室で、『死滅』の文字を紛れさせた高橋さんと、人間時代に『死滅』の文字を目撃した島さんが対面を果たした。島さんは高橋さんに感謝を伝えたあと、その場に居合わせた弊社の記者に対して、次のように述べた。
「幽霊の中には、人間の寿命を見透かせる者がいると聞きました。であるならば、人間たち――真人に、彼ら自身の寿命を伝えてもいいのではないでしょうか。病気の場合は宣告するのに、そのほかの場合は宣告しなくていいのでしょうか?」
島さんの主張には、賛成の声も、反対の声も相次いでいる。この件について、幽霊長官は、「人間との間で締結された条約は守らねばならない」との声明を発表した。
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