赤いハンカチにバーコードを

 2020年3月28日、午後2時ごろ、群馬県内の100円ショップで買い物をしていた主婦の立山さん(34)は、買い物を終えて店内のトイレへ寄った際、ポケットに仕舞っていた赤いハンカチがなくなっていることに気が付いた。すぐ店内で発見されたが、赤いハンカチにはなぜかバーコードがついており、バーコードを読み込むと『32540円』と表示された。


 2020年10月17日、午前10時ごろ、同事件を起こした疑いで、群馬県内の無職の幽霊、藤田誠さん(享年23、現在34)が逮捕された。藤田さんは犯行内容を全面的に認め、犯行動機について次のように供述している。


「あの赤いハンカチは呪われたハンカチでした。それを、どうしても、立山さんに伝えたかったのです。それで、バーコードをつける犯行に及びました」


 藤田さんによれば、藤田さんは呪いを見分ける能力に長けている。事物に染みついた呪いを見定め、その呪いが及ぼす影響を見透かせる。一部の幽霊に認められる能力であり、生来性の特殊能力と考えられている。


「わたくしは、あの日、百円ショップを彷徨っていたのですが、立山さんが持っていた赤いハンカチに強い呪いがあるのを感じました。なぜ、呪いがあったのか、それはわかりません。とにかく、あのハンカチは、立山さんの命をじわじわと吸いとり、我が身のものとしていたのです」


 立山さんの命を吸いとることによって、赤いハンカチの価値は上昇していた。赤いハンカチにバーコードをつければ、その価値の上昇を伝えられるかもしれない、と藤田さんは考えた。


 藤田さんの犯行は善意によるものだったが、真人に対する霊術使用は禁止されている。しかるべく処罰を受けなければいけない。


 しかし、なぜ、立山さんの娘からのプレゼントである赤いハンカチに呪いが含まれていたのか、気になるところだ。呪いは本当にあったのか、と問う警察官に、藤田さんは「絶対にありました」と強く主張する。真相はいまだ不明である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る