焼け野原の未来を見せる
2020年3月25日、午後1時ごろ、名古屋市内在住の春休み中の高校生、吉田美玖さん(16)が、自室の壁掛け時計の針を前に進めると時間を進められる事実に気づいた。美玖さんがぐるぐると針を回しつづけたところ、焼け野原となった未来に辿りついた。そのときは、時計が壊れ、現実に戻り、事なきを得た。
そのときの美玖さんが手にしたのは『歪む時計』である。『歪む時計』とは、1931年に没したトーマス・エジソンが、幽霊社会の幽霊科学を広く勉強した末に、1942年に発明したエジソン最後の発明品である。幽霊社会では大ヒットした。
『歪む時計』の針を動かすと、動かしたぶんだけ、時間を戻したり、前に進めたりできる。1950年代には、『歪む時計』を利用したテストでのカンニングが社会問題となった。現在は、役所から使用許可状を得なければ使用できない。
当然、『歪む時計』は人間の目には見えない。美玖さんが『歪む時計』を目にして利用できたからには、霊術が使用された疑いがある。その件について、2020年3月末から、幽霊警察は調査していた。
2020年10月16日、午後4時ごろ、同事件を起こした疑いで、名古屋市内に在住の幽霊、金城泰輔さん(享年27、現在35)が逮捕された。金城さんは、犯行内容について全面的に認め、犯行動機について次のように供述している。
「知らせたかったんです、未来は焼け野原になることを。『歪む時計』を用いて未来に行ったときに焼け野原になったから。真人なら誰でもよかったです。『歪む時計』を手にしたのが彼女である必要はありませんでした」
霊術を用いて真人に奉仕するのは法令違反であるうえ、『歪む時計』が見せる未来には一貫性がないと昔から多く指摘されている。『歪む時計』を研究する第一人者は、「『歪む時計』は、過去については、一貫した歴史を見せるが、未来については、なんら一貫性がない。あくまでも過去の上に現在があるのであり、現在の上には、無数の可能性があると示唆している」と話す。
つまり、金城さんや美玖さんが『歪む時計』で見た未来は、可能性のひとつに過ぎない。安心していただきたい、と美玖さんに言いたいところだ。
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