知らぬ間に移動か

 2020年3月3日、午後6時ごろ、大阪市内の高校生である西岡くん(17)が歩きスマホをしながら大阪駅のプラットホームを歩いていたところ、いつのまにか京都駅のプラットホームに移動していた。移動術が勝手に利用された疑いがあると見て、幽霊警察が調査していた。


 2020年10月11日、午後4時ごろ、同事件を起こした疑いで、大阪市内に在住の幽霊、中島実さん(37)を逮捕した。中島さんは罪状を全面的に認めている。犯行動機については、「悪意はなく、過失であった」との主張をしている。


「誰かを陥れようというつもりはなかったんです。たまたま、駅のホームで移動術の練習をして、移動用のワープホールをつくっていたら、そこに、あの男の子が入っていっただけで」


 霊術を練習する際には、幽霊学校内の練習室を利用しなければいけないのは周知の事実だ。幽霊学校を卒業済みの人にも開放されている。特段の場合を除いては、人間社会で霊術を用いてはならないことになっている。


「それは悪かったと思っているんです」と中島さん。霊術使用については反省の色を示している。「でも、悪意は本当にありませんでした」と主張を曲げない。


 中島さんによれば、中島さんは企業の営業担当として働いており、日本中を移動することが多い。しかし、移動術が苦手なため、毎回、電車に乗って移動していた。それでは、時間がかかって、効率的に仕事ができない。そこで、移動術の習得をしようと練習していたのだ。


「もっと学校にいる間に練習しておけばよかったのですが」と、後悔する中島さん。


 近年、国民の霊術スキルが全体に低下していることが社会問題化している。幽霊学校で十分に霊術を習得しないまま卒業する人が増加傾向だ。科学技術の発展によって、霊術そのものの魅力が低下していることが原因の一つとして挙げられている。


 しかし、移動術のように、科学技術を凌駕する霊術は山のように存在する。霊術の魅力を伝える啓発活動が活発になると、国民の霊術スキルは上がっていくかもしれない。

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