コミュニケーション妨害の霊術

 2020年3月17日、午後2時ごろ、岡山県内の高校生、坂島くん(17)が友人3人とカラオケに行ったところ、友人3人と会話が成立しなくなるという事件が発生した。コミュニケーション妨害の霊術が使用された疑いがあると見て、幽霊警察が調査していた。


 2020年10月10日、午後3時ごろ、同事件を起こした疑いで、岡山県内の幽霊、佐藤伸介さん(18)が逮捕された。幽霊警察からの取り調べで、佐藤さんは、犯行内容について全面的に認めた。犯行動機について、次のように供述している。


「カラオケを楽しんでいるのが許せなかったんです。ちょっと邪魔をしてやろうと思いました」


 佐藤さんによると、佐藤さんは人間として12年生きて、交通事故で死亡後、幽霊に転身している。20歳以下で死亡した場合、幽霊学校に転校するので、人間社会で青春を謳歌できない。


「だからね、俺は、青春を経験していなんです。高校生活を謳歌しないまま、死んでしまったんです」


 幽霊学校があるが、佐藤さんは、幽霊学校で思うような青春生活を送れなかったという。そのため、青春を謳歌している人間を見ると、邪魔をしたくなるのだった。


 これは、幽霊心理学の分野で、青春コンプレックスと呼ばれている。青春を経験する前に亡くなった幽霊たちは、青春への憧れが強く、青春を謳歌する者たちに対する歪んだ感情を抱きやすい。ときには、霊術を使用するなどして、他人の青春を邪魔しようとする。


 佐藤さんは、「青春コンプレックスであるという自覚はあります」と話した。精神衛生上の対策はしていたのかとの問いに、「していませんでした」と答えている。


 人間社会でも幽霊社会でも、青春をテーマにしたエンタメ作品が多い。それらの作品の影響で過度な期待を抱かせているとの指摘もあり、一部の幽霊心理学者は、「過度に欲望を刺激する映画やアニメや小説に触れる場合には、自分の精神状態を把握したうえで、十分な注意をしてほしい」と呼びかけている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る