犬か、人か。いや、幽霊だ。

 2020年3月11日、午前8時ごろ、年金生活を送る真人(幽霊ではない人)の竹さん(63)が鹿児島市内の公園を散歩していたところ、「ワン!」と吠える人間と遭遇する事件が発生した。それは人間ではなく、幽霊である。


 幽霊警察は調査を続けていたが、今日、2020年10月8日、午後3時ごろ、鹿児島市内に在住の幽霊、若狭俊夫さん(39)を逮捕した。若狭さんは、犯行について「わたしがやりました」と全面的に認めている。同時期、鹿児島市内では同様の事件が相次いでいたため、余罪の可能性もあると見て、調査が進んでいる。


 若狭さんは、警察での取り調べで、次のように証言している。


「人間時代から、サプライズをするのが大好きでした。子供のときは、死んだふりをして親をびっくりさせたし、大人になってからも、彼女の前で死んだふりをしたりしました」


 若狭さんは、人間時代から、他人を脅かしくなる気質であると自覚していた。しかし、ただの冗談だから深刻に考える必要はないと捉えていた。大きな事件に発展したのは、若狭さんが35歳のときである。


「そのとき、友人と僕の家にいたんですが、わざと、死んだふりをしてみたんです。そのときの僕は、死んだふりがプロのレベルに入っていて、めちゃくちゃリアルに死んだふりでができました」


 若狭さんが死んだふりをしたとき、友人は何度か若狭さんに声をかけると、なぜか若狭さんから離れていった。目を開けてちらりと見ると、友人が若狭さんの自宅の中を荒らしているのだった。若狭さんは、「なにをやっているんだ」と声をかけた。すると、友人は、「いや」と首を振った。死んだのをいいことに、盗みを働こうとしたのだ。若狭さんは、そう考え、口論に発展し、ついには友人に刺殺された。


「あんなことがあったのに、まだ、凝りてないんですよ。自分でもダメだとはわかっているんですが」


 幽霊精神科医の診断によれば、若狭さんはゴーストハウス症候群だ。これは幽霊心理学の分野で近年注目されている症例であり、「人間を脅かしたい。優越感に浸りたい」などの感情から、わざと霊術を用いて人間を脅かす犯行を指す。ゴーストハウス症候群の傾向として、人間時代にも同様の傾向がある割合が高いと指摘されている。

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