第3話 新たな装備

 王女アンジェリーナと合流してから数時間後、3人は王女たちと共に森の中にを進んでいた。


「それじゃあ、あんな気持ち悪い奴らが王都にはいっぱいいるんすか?」


「いっぱい、という程ではないが、常に警戒が必要な程度には存在する。奴らはこの国を手中に収めるために、国にとって重要な人物や施設を攻撃しているのだ」


「他の世界からの侵略なんて、本当にあるんですね……」


 王女の説明に、賢治が悲痛そうに呟いた。


「ああ、奴らとの戦いの歴史は古い。これまでは無事に撃退できていたが、最近、あちらの世界で強大な指導者が生まれたようなのだ。規模を増した侵略に、我が国は苦しめられている」


「それでアンジェリーナさんは避難かあ……」


 王女の話によると、この森の中に秘密の避難所があるらしい。


「私というよりは、大神官様の避難だがな。私は3人いる王女の1人だが、大神官様は王都の結界と自らの生命を重ねている偉大なお方だ。大神官様が害された場合、王都は最も強力な守りを失ってしまう」


「……あの爺ちゃん、そんなに重要人物なのか……」


「馬車で守られてただけはあるな」


 王女が乗っているものだと思っていた馬車だが、蓋を開けてみれば王女は外で、中にいたのはお年寄りとそのお世話係だった。女神も説明が足りないだろう。


「これから行く避難場所には、古くからの強力な惑わしの魔術がかかっている。異界の魔獣が相手だとしても見つかることはないだろう。奴らが大神官様を探し回っている間に、王都では内部の敵を一掃するつもりなのだ」


 そう言って胸を張る王女。自信のある表情だが、少し口が軽すぎはしないだろうか。




 さらに数時間後。3人は王族の避難所への結界を抜けていた。


 結界の内側へと入るためには王族の血が必要であり、王女が大神官と行動を共にしていたのは、この場所へ入るためだったようだ。


 ちなみにその大神官は現在、馬車の中で睡眠中だ。自然に目を覚ますのを待つらしい。


 辿り着いた洋館のような建物の前で、王女が3人へと声を掛ける。


「ここが避難用の屋敷だ。あまり広くはないが、今日はゆっくり体を休めてくれ。私たちを助けてくれた報酬には、屋敷で保管している装飾品を渡そう」


 王女の言葉に、3人は呆然と屋敷を見上げる。


「……広くない? え? 広くないって言った……?」


「……いや、でかいだろ。オレん家何個分だよ……」


「……おっきいよねえ……」


 王女の背後にある屋敷は、3人の通う学校の体育館ほどはあった。さすがは王女。日本の一般家庭で育った3人とは価値観が違う。


「さあ、中へ入ってくれ」


 屋敷の入り口へと王女が進むと、扉が勝手に開いた。その不思議な現象を意に介さず、王女は屋敷の中へ入っていく。


 3人も顔を見合わせてから後を追った。


「自動ドア……?」


「異世界にもあるのか自動ドア」


「これも魔術を使ってるのかな……?」


 3人が呟きながら進むと、王女はエントランスで待っていた。


「この屋敷の管理は王家が契約した妖精が行っている。屋敷内では勝手に物が動いているように見えるかもしれないが、あまり気にしないで欲しい」


 王女が手で示す先には、白い光の球が浮いていた。これが妖精らしい。


「そして、すまないが、私はこれから結界の状態を確認してくる。この妖精を案内に付けるから、貴方たちは部屋で休んでいてくれ」


「うっす。ありがとござあっす」


「ご丁寧にどうも」


「ありがとうございます」


 礼を言う3人の前で、妖精が挨拶をするように動く。その様子を見て、王女は頷いた。


「夕食のときには呼ばせてもらおう。では」


 そう言って、王女は颯爽と屋敷の奥に歩いて行く。残された3人はお互いの顔を見た。


「おっし! じゃあ部屋に荷物置いて、それからここの探検に行こうぜ。隠し通路とかありそうじゃね?」


「着いて早々、人んちの家捜しとか言うんじゃねえよ」


「じゃあ、亮太は部屋で留守番か?」


「いや、行くけど。結界を通らなくても済む抜け道とかあったらマズイしな。安全の確認は必要だろ」


「ええと、とりあえず迷惑を掛けない程度に行動しようか」


 話し込んだ3人の周りを、存在を主張するように妖精が回る。


「お? 悪い悪い。案内よろしくな。ええと……何て呼べばいいんだ……?」


「妖精さん、かな? よろしくお願いします」


「よろしくな」


「妖精さん、いい部屋頼むぜ!」


 3人の言葉に、妖精は張り切ったように宙に円を描く。そして、先導するように動き出した。


「部屋のベッドは柔らかいといいな!」


「ああ、藁のやつだと刺さるからな」


「ははは、けっこう慣れたけどね」


 これまでに泊まった宿屋の寝床について話しながら、3人は妖精のあとを追った。





 夜。妖精が作った夕食を満足いくまで食べた3人は、久しぶりの柔らかいベッドで眠っていた。

 日中の屋敷探索ではしゃいだせいか、3人とも熟睡している。簡単に目覚めそうには見えない。


 だが、悠馬の体がピクリと動いた。


「ん……むう……ん、ん? い、いたたたた!? うお!? 足攣ってる!? いってえ!!」


 寝ながら足を攣ったらしい。魔獣との戦いで使用した限界突破が原因だろう。悠馬は必死の表情で足を伸ばす。


「ふおぉ~。あっぶねえ……めちゃくちゃ痛かった……」


 痛みが止んだらしい悠馬は、ベッドから降りて足の調子を確かめる。


「ちょっと引き攣るか……? まあ、寝れば治るだろ」


 一人頷いた悠馬はベッドへ戻ろうとし、そこで立ち止まった。


「……そういや喉乾いたな。なんか飲みに行くか」


 悠馬は部屋の外へと歩き出す。この屋敷にいる妖精は睡眠を必要としていないらしい。厨房に行けば、飲み物は出してもらえるだろう。


 部屋を出ると、屋敷の廊下は静まり返っていた。当然、照明も消えている。だが、不便さを感じるほど暗くはなかった。


「おお~、明るいと思ったら満月だ。夜だけどあれだな。ちょー晴れてんな」


 近くに人工の明かりがないためか、雲のない夜空は月と星が良く見える。


「……って、あれ?」


 月を見ながら廊下を歩いていた悠馬が、何かに気付いたように足を止めた。窓に近付き、屋敷の庭へと視線を送る。


「……やっぱりアンジェリーナさんだ」


 庭にいたのは王女だ。月の光を浴びながら、1人で夜空を見上げている。


「ん~……あ~……よしっ、行くか」


 悠馬は悩むように唸った後、近くの部屋へ入って毛布を手に取った。そのまま歩き出す。向かう先は厨房ではなさそうだ。




 月明りに照らされた庭を、悠馬が進む。毛布を手に足を進める悠馬の表情は、珍しく真面目なものだ。


 視線の先には夜空を見上げる王女。身動き一つせず、ひたすらに月を見ている。


 その触れてはいけないような姿に、悠馬は息を飲む。だが、悩んだ様子を見せたのは一瞬だけだった。


「アンジェリーナさん、こんばんは」


 その挨拶に、王女はゆっくりと首を動かして悠馬を見た。


「ああ……ユウマか。どうかしたのか?」


「体、冷やさない方がいいすよ」


 悠馬が持って来た毛布を広げて王女に渡す。


「ああ、すまない。確かに……いつの間にか体が冷えていたようだ」


 王女は悠馬に礼を言いながら毛布を羽織り、また月を見上げた。


「……月が満ちる夜は寝付けないのだ……。失った者のことを思い出してしまう」


「そう……なんすか……」


 難易度の高い状況に、悠馬の顔が引き攣った。人生経験の足りない男子高校生に、上手い言葉は思いつかない。


「なあ、ユウマ。大切な者を失くしたとき、人はどうやって乗り越えれば良いのだろうか」


 王女の質問に悠馬は悩むように眉を寄せ、唸り……そして体の力を抜いた。


「……目が痛くなるまで泣いて、声が出なくなるまで叫んで、倒れるまで走って、そんで腹が減って起きるまで寝ればいいっすよ。あとは墓の前で、お前の分まで楽しんで生きるからな! って言ってやります」


 淡い笑みを浮かべて、悠馬はそう言い切った。


「……ユウマは、最近誰かを失くしたのか……?」


「そうっすね。こっちに来るちょっと前に幼馴染が死にました。俺らは元々4人だったんすよ」


「そうか……私が失くしたのは乳母だ。実の母親よりも特別な人だったよ。私を守って……亡くなってしまったんだ」


 月を見上げたまま、王女が言う。


「ユウマは、自分だけが生きていることに罪悪感を覚えないか? 大切な者はもう笑えないのに、私は感情を持って生きる……そのことに、申し訳なさはないか?」


 王女の質問に、悠馬は背筋を伸ばす。


「ないっす。いや、あ~、前はあったけど、今はないっす」


「……それは何故だ?」


「あ~……死んだ奴はちっさい頃からの仲なんすよ。出会いの記憶がないくらいちっさい頃。もう家族みたいなもんでした。だから自信を持って言えますよ。俺らが一生笑わないなんてことを、アイツは望んだりしないって」


 王女が月から視線を下ろし、悠馬を見た。


「例え俺が死んだって、俺はアイツらにいつまでも悲しめなんて思わない。それは俺ら全員が同じっす。そんくらいは、馬鹿な俺でも分かります。アンジェリーナさんの乳母? の人も同じだとじゃないすか?」


「……そう、だな。私の乳母も、いつまでも悲しみ続けろとは思わないだろう。それどころか、今の私では叱られるかもしれないな……」


 そう言って、王女は小さく笑う。


「ふふっ」


「あ~、ええと……?」


「ああ、すまない。乳母のことを思い出してしまってな。普段は優しいが、叱るときには厳しい人だったんだ」


 王女が微笑みを浮かべて悠馬を見る。


「ありがとう、ユウマ。心のつかえが取れた気分だ。久しぶりに笑ったよ。しかし、そうまで言えるとは、亡くなったユウマの友人は良い人物だったのだな」


 悠馬は王女の顔を見て呆けていたが、『良い人物』の辺りで正気に戻った。


「いやいや、全然“良い人物”とかじゃなかったっすよ! 無愛想だし、頭が良いせいかクールぶってるし、すげえ皮肉言ってくるし、俺らじゃなきゃ、絶対アイツ1人でいましたよ」


「ふふ、ふふふっ」


「ええ? 笑うとこでした?」


「いやなに、良い友人だったのは確かなようだな。さて、そろそろ中に戻った方が良いだろう。夜風も冷えて来た」


「え、あ、はい」


 微笑みながら歩き始めた王女の後ろを、悠馬が追い掛ける。深夜の月見はこれで終わりのようだ。




 翌朝。朝食が並ぶ屋敷の食堂では、悠馬が大きな欠伸をしていた。


「ふああ、ねむ」


 賢治が不思議そうに悠馬を見る。


「あれ? 悠くん、寝不足?」


「そういや、悠。夜中に騒いでなかったか? なんかバタバタしてた記憶があるんだが」


「ん? ああ、夜中に足攣ってた。たぶん、昨日の限界突破のせいだ」


「今は大丈夫?」


「だいたい? 寝て起きたら治った」


「肉多めに食っとけよ。筋肉付くぜ」


「んー。そうするー」


 眠そうに返事をしながら、悠馬は豚肉のソテーへとかぶり付く。


 朝食の席に着いているのは、3人と王女のみ。王女は3人の会話に楽しそうに耳を傾けながら、無言で食事を進めていた。

 王家のテーブルマナーには、食事中の私語禁止があるのかもしれない。


 3人が騒がしく、王女が静かに食事を進めていると、食堂の扉が開いた。入って来たのは大神官と、その付き人だ。


 大神官は豊かな白い髭をした老人だ。髪はない。昨日悠馬がハゲ、と言いそうになったところを、亮太が肘打ちで止めていた。


 足を進める大神官が片手を上げる。視線の先は立ち上がろうとした王女だ。


「ああ、アンジェリーナ姫。そのままで良い。ここは城ではないのだから」


「……分かりました。何を召し上がりますか?」


「麦粥だけあれば良い。朝はそう食わんのでな」


 そう言いながら、大神官はテーブルへと近づく。その視線が3人を向いたところで、大神官が呻き声を上げた。


「う、うぐおおっ」


 苦しそうな声を上げ、大神官が膝を付く。尋常ではない様子だ。付き人が駆け寄る。


 その大神官の姿に、3人は大いに慌てた。


「や、やべえ! 救急車! 199だっけ!?」


「AED! 電気ショックだ!」


「あ、わ、わ。ええと、心臓マッサージ! 一秒間に60回だっけ!?」


 残念ながら全員間違いだ。この世界に救急車はない上に119だし、同じくAEDもない。一秒で60回はもはやガトリングだ。


「大神官様っ!」


 さすがの王女も取り乱している。大神官に何かあった場合、王都の守りが消えることになる。そうなった場合は大問題だ。ここまで避難して来た意味がない。


 だが、当の大神官は胸を抑えながらも、無事を示すように右手を上げた。


「ぐう、ううう……私は大丈夫だ。だが、これは……王都の結界が一枚破られたようだ……」


「そんなっ!」


 王女が悲痛な表情で声を上げる。王都の守りは強固なものだったはずだ。いったい何があったのか。


「ぐ、はあ……竜だ。黒い竜が王都を襲っている。結界と命を重ねた儂には分かる。おお……何という悍ましい気配だ……」


「王都は大丈夫なのですか!?」


「……今はまだ。王都の守りの結界は7枚。残りの6枚で、数日は持ちこたえられるだろう。だが……」


 数日の間に竜を討伐しなければ、王都は壊滅するということだろう。


「そん、な……」


 王女は力なく椅子に崩れ落ちた。


 食堂に重い沈黙が満ちる。だが、その中で動く人間がいた。


 悠馬だ。


「アンジェリーナさん、俺らが行ってやるよ。竜の一匹くらい倒してみせるぜ」


 全員の視線が悠馬へと集中した。例え逆境のときでも、悠馬は空気なんて読まない。そして、一緒にいるのはそんな悠馬の行動に慣れている2人だ。


「まあ、ここまで関わって見ない振りなんてあり得ないしな。王女様、やってやりますよ」


「はい。僕たちも出来る限り協力します」


 王女が顔を上げる。だが、その表情は悲痛そうなままだ。


「……それは……」


 王女が言い淀む。それはつまり、3人が国のために命を懸けるということだ。


「ははっ、気にすんなよ、アンジェリーナさん。俺たちはけっこう強いんだぜ? デカい奴とも戦ってきたんだ。空飛ぶトカゲごときに負けたりなんかしねえ」


 悠馬が笑う。


「だから、どうせなら笑顔で見送ってくれよ。その方がやる気が出るからさ」


 悠馬の言葉に、亮太は仕方なさそうに笑って肩をすくめ、賢治は嬉しそうに頷いた。


「ユウマ……分かった。3人とも、この国を救ってくれ。よろしく頼む」


 ぎこちない笑顔を浮かべ、王女はそう言った。


「よし! その依頼引き受けた! お姫様からの直々の依頼だ! 行くぞお前ら!」


「おう!」


「うん!」


 気合を入れた3人はすぐに立ち上がり、準備のために部屋へと急ぐ。その様子には、迷いも躊躇も見られない。




 与えられた部屋の中で、3人は出発のために荷物を整理する。もっとも、それは持ち物を乱雑に鞄に放り込むだけの作業だが。


「とうとう竜まで来たな。これはもう、俺たち勇者を名乗ってもいいんじゃね?」


「確かに勇者だな。悠、お前さっき王女様にため口だったぞ。よくそんな真似ができたな」


「……え、マジ? 全然意識してなかった。うわあ、これなんだっけ、ふ、ふ、不敬? 不敬罪?」


「ああ。竜を倒しても不敬罪で処刑だな。頑張って逃げろよ」


「ええ!? マジかよ!? 竜を倒した分の報酬で、処刑やめてもらえねえかな?」


「ははは、王女様は気にしてない様子だったし、大丈夫だと思うよ」


 雑談で盛り上がりながらも、3人は荷物の整理を終える。


「荷物は詰め終わったね。それじゃあ、出発する前に女神様からの報酬を受け取ろうか」


 そう言いながら、賢治が女神の羊皮紙を広げる。


「竜に効くような必殺技がいいなあ」


「とりあえず、すごそうなのが欲しいところだな」


「え……? あれ? 今回は能力じゃない、みたい?」


「「は?」」


 賢治の発言に、悠馬と亮太は羊皮紙を覗き込む。


「全員同じように、『専用武装』って書いてあるな……」


「……どうやって羊皮紙から武器が出て来るんだ? 女神様降臨か?」


「受け取ってみる……しか、ないかな?」


 疑問を浮かべた顔のまま、3人は羊皮紙へと手を載せる。その瞬間、羊皮紙から3つの光が飛び出した。


「うおっ、なんか出た!」


 3人の目の前で光が大きくなり、その中からそれぞれの装備が現れる。


「すげえ……かっけえ……」


「ああ、特別製って感じだな……」


「すごい力を感じるね……」


 3人は自分の装備へと手を伸ばす。悠馬には剣、亮太には盾、賢治には杖が与えられた。


「おお~……なんかダンジョンの裏ボスとかがドロップしそう……」


「馬鹿っぽい例えだけど同意だな。かなり強そうだ」


「うん。これなら、もっと上手く魔術を使えそう」


 悠馬と剣と亮太の盾は、光を金属にしたような輝きだ。表面には曇り一つない。

 対して、賢治の杖は闇を押し固めたような姿だった。ほとんど光を反射しないのか、詳しい形を把握することすら困難だ。


 新たな装備に感心する3人の中心で、羊皮紙の文字が光る。


「新しい依頼も出たみたいだね」


「ああ~、女神様には悪いけど、今は後回しだな」


「……いや、その心配はいらないみたいだぜ?」


 3人が羊皮紙に浮かび上がった文章を読む。


「……王都を襲う邪竜を討伐せよ……? うおお!? 俺らにぴったりじゃん! さすがは女神様! 分かってんなあ!」


「これで心配事はなくなったな」


「うん。集中して、気を付けて行こう」


 装備を整えた3人は互いの顔を見て頷き、屋敷の外へと向かった。




 3人がエントランスまで来ると、そこには王女が待っていた。


「来たか。3人とも、これを受け取ってくれ」


 王女が差し出して来たのは、3つの腕輪だ。


「私たちを救ってくれた報酬だ。ユウマには疲労軽減の腕輪を、亮太には膂力強化を、賢治には魔力収集のものを準備した。竜に挑む際には役立ててくれ」


「おお! ありざあっす」


「どうも。大切に使います」


「ありがとうございます」


 腕輪を受け取った3人は、さっそく腕へと装着する。


 全員が腕輪を見に付けたのを確認し、王女は深く頭を下げた。


「私が出来るのはこれくらいだ。3人とも、王都をよろしく頼む。そしてもちろん……無事でいてくれ」


「もちろんっすよ! いい知らせ待っててください! それじゃあ行って来ます!」


「腕輪ありがとうございます。それでは」


「王女様もお元気で!」


 騒がしく王女へ声を掛けながら、3人は屋敷の外へと走り出す。


 来たときと同じように扉が開き、3人はその勢いのまま飛び出した。目指す先は邪竜に襲われている王都だ。

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