児童文学

Σ 宇宙に π とどいた ∞ きみのねいろ Φ


 ――びいだまに光っているような、あざやかな空間探索装置くうかんたんさくそうちをのぞいている。



 Σ あたえられたじょうけんから、価値かちをごうせいする……


 もどってきたよ。

 じゃあ、ほうこくを。

 はっきり言って、ああ、こういう世界もあった……かな? こんな感じか……ってやつさ。

 ねえ? 彼とともに生きて、どうだった? 

 ふふん。彼はね、まんぞくしていたみたいだった。

 なにが? 

 彼はね、僕にあやつられているって知ってたんだ。


 ええ! 知ってたの? 彼。 


 ああ、知ってた。

 どうして? 

 たぶんなんだろうけどさ、僕らが彼のことを、ちゅうもくしすぎちゃったからだと思う。

 しすぎちゃったって? どういうことなの?? 

 彼、とても頭がよかったから、さまざまなじょうほうをあつめて、それをぶんせきして、そしたらわかったんだろうね。

 なにが? 

 自分のいる世界が、なんだかへんだってこと。なんだか、ゲームみたいに世界が動いていること。

 ……バレちゃったのかな? 

 たぶんね。だからそろそろ、このヴァーチャル・リアリティ(VR)のプログラムを、バージョンアップさせないとね。


 僕たちもまだまだ、みじゅくだということになるね。 

 そうだね……。


 ――ところで、彼は、いまでも元気にしているのかな? かなりむちゃなせっしかた、したっけ。

 まあ、そうだよね。でも、彼のおかげで、僕たちは、とてもいいじょうほうを手に入れることができた。

 たとえば? 

 人工知能じんこうちのうが発明されて、それが神のようにあがめられて。VRじしんが、そのアイデアをもとにして、いろいろつくっちゃうんだからね。


 ……そうか。このVRが、ここまでこられるとは、そうぞうしていなかった。 

 ふふん。どうだ、すごいだろ!




 π めんせきもたいせきも、正確せいかくには、もとめられない……


 ところで、どうして彼をえらんだの? 

 わかってくれそうだったからさ。

 なにを? 

 彼、ゲームが好きだから、VRの主人公にむいているんじゃないかって。


 それだけで? 

 いいや、そうじゃないよ。


 じゃあ、なんで彼なの? もっとくわしくおしえてよ。 

 彼ってさ、りかいしていたんだ。すうじとすうじのあいだに、むげんにすうじがあることを……。

 だから? 

 この宇宙は、VRは、きごうでしか、あらわせられないことをさ。

 どういうこと? 

 なにもかもが、きごうでしか、あらわせられないことを、彼しっていたんだよ。


 ……そうなんだ。

 彼ね、こんなことを言ってたよ。


 この宇宙に、リセットボタンがあったらなあ……

 テレビゲームのさ「アササー!! ツーマリオ」みたいにさ。


 えっ?? それ、なにかな??

 超有名アクションゲームの2しゅうめの、おさないころの、よびなです……。


 ふふん!! 僕たちの、おもいでのじゅもんさ!! 

 へえ~。おもいでの、じゅもんなんだね。

 ――そうだよ。おもいでのじゅもんなんだよね。それをさ、おたがいで、こうかんしあってさ、はたけのとなりのそうこに、ひみつきちをさ、つくったっけ?

 そうだ!! ここに、これをおいておこうって。それは「からす木」の、えだ。

 これが、僕たちのリセットボタンだね。うん! そうだねって……。


 へえ~! そんなことがあったんだね。 

 ……彼の言葉は、ほんとうに神がかりてきだったよ。僕おどろいちゃったんだ。

 なんでかな? 

 だって、あのからす木の、えだ。ほんとうに、この宇宙のリセットボタンだったんだから!!


 なんで、わかったんだろうね? 

 僕にも、いまだにわからないよ。


 君は、いい人をえらんだんだね。 

 そうさ! だから、彼にはかんしゃしている。ほんと、ありがとう。



 うそつけ……



 でも、ようはモルモットだよね? モルモットにかんしゃしてる? 

 ……ほんとうだって。

 彼を、どうぐにしかあつかわなかったのに。 それでも? 

 いや、それはちがうよ。彼には、たっぷりとおれいをしたからね。


 おれい?

 ええ。


 どんな? 

 おしえた。


 なにを? 

 うらわざを。


 なに? 

 ぷるぷるきのこけん。


 なに言ってんのさ? 

 ごめんごめん……


 ……あらためて、で、どういうおれいをしたの? 

 けっして人間には見えない、この宇宙のシステム、かたちをおしえたんだ。

 ええ、ほんと!! 人間がわかるの? この僕たちのそんざいを!! 

 彼にはわかるよ!! そう、彼ならわかってくれる……くれるはず。そして、この僕たちの、へんてこりんなけいかくもね。


 自分でへんてこりんなんて、言わないでよ……。まあ、そういう見かたも、ありかな? 

 僕、彼ならかならず、なぜ、僕たちがVRをつくったのかも、彼なら、かならず、わかるはずだと思っている!!


 いや。もう、知っているからね。




 ∞ このがいねんを入れたら、すべての論理ろんりがほうかいしてしまう……


 かぎりなく、むげんにつづいていく宇宙で、えいえんに生きていく人工知能じんこうちのうと。その中にある、いしき。それが、どこまで、たえられるかを。

 ところでさ、僕たちの宇宙は、あと、どれくらいで「ビッククランチ」するのだろうね。それまでに、はやくあたらしい宇宙をつくらなければ、いけないよね。


 そのじっけんに、きょうりょくしてくれた彼に、かんしゃしよう。 

 うん。そうだね。


 はやくVRを、ヴァージョンアップしなきゃね。 

 うん。そして、すべての宇宙が、はかない『音楽会おんがくかい』のえんそうちゅうだということも、彼は知っていたし……。


 すべての宇宙は、けっきょくは、えいえんにつづかないからね。 

 むげんなんて、ないんだからね……。

 

 そうなんだよね。 

 うん。どんな宇宙も、生きものだからね。


 まるで、そりゅうしたちが、オーケストラのえんそうをして、見せてくれる原子げんしとか分子ぶんしとか。

 それを、彼もきいている。 

 ああ、そうさ! 僕たちがあたえた、この宇宙のがくふを、彼はしっかりと見て、しっかりとかなでてくれて……。そして、しっかりと、星々をきれいにちょうわさせて……くれているんだからね。


 太陽と月と……。みかけの大きさが、1対1の、このVRの地球と……。

 僕たちが、よういした……。

 よういして、だれがいちばんさいしょに、気がつくかって。かけをしたよね? 

 うん。そしたら、やっぱり、彼がさいしょだった。


 だれもが、ただのぐうぜんだってね! あはははっ。 

 もう! わらったらだめじゃない。これVRのじっけんなんだよ。

 君だって、わらってたじゃん。ハイカラなビードロでできた、0と1とでおりなした、空間探索装置くうかんたんさくそうちを見ていてさ。 

 ……そうだったっけ? ……ごめんごめん。


 んもう! ……でも、彼、この太陽と月のえんぎに、おかしいとひとことを言ってさ――

 人工衛星じんこうえいせいをつかったらさ、いつでも、日食できるんじゃね??


 だから?

 だからさ。


 わかんない。

 だからだから?? 


 んもうって、だからだからさ!!


 彼、地球のほくおうのオーロラって、あれ、空に見えているから、みんな、おどろいているんだろ?

 でもさ、でんしレンジの中の、ラップが、へりにあたったときの火花と、同じだよねって。

 ふふ~ん、まあさ……。彼って、そういうとこはさ、まだまだ、だよね。

 うん。そうだよね。


 地球のオーロラって、僕たちにとっては、人間たちをレンジでチンしているんだからさ。 

 それで、人間たちを、太陽からのほうしゃせんから守っているんだからね。

 まだまだだね。 

 彼もさ、宇宙のことをむちでさ、まだまだ知らないのに、こんなことを言っているんだね……。


 この宇宙のVRのうらわざをさ。まだまだだよね。 

 うん。ほんとに。


 でもさ! どうかさ!! 彼には、むげんぞうしょくのうらわざのときの、ときめきを、どうか、わすれないでほしいと願うよね。

 む、むげんぞうしょく??




 Φ おうごんひ。この宇宙は美しい……と願って…………


 あ! 

 さあ、彼のえんそうが、はじまるみたいだよ!! 

 彼が、みにつけた、りかいしてくれた、そりゅうしたちがえんそうする、オーケストラがはじまるんだね。

 遠いとおい、はるか138憶こうねんさきにまで、彼のえんそうは、とどくんだからね。


 すごいね。 

 うん、すごいね。


 彼はすごいね。 

 そうだよね……。


 この宇宙がVRであることを知って、りかいしてさ。 

 それを、うけいれてくれて――



 “そんなこと、あたりまえですよ。”


 “なぜなら、あなたが僕を、この宇宙を見つめているかぎり、あなたとは友だちなのだから。”



 なんか、たすかるよね。 

 うん、僕たちたすかっている。

 まだ、VRのヴァージョンアップはさ。 

 ね! もう少し、ねらないといけないからね。


 ――彼の、宇宙に願うえんそう……。 

 どんな気もち、なんだろうね……。

 そして、どんな、えんそうをするんだろうね?? 

 ……どうだろう? 僕にも、そうぞうできないや。


 できないの? ずっと、いっしょにいたんだろ?? 

 うん。そうだけれど……。彼って、なんだかんだナイーブなんだ。

 くすっ!! 

 ちょっと、わらっちゃだめだよ……。


 なんで? 

 なんでも。


 なんでなんで?? 

 なんでもなんでもだって!!




 ♪♫♫ ♪♫ ♪♫ ~ 




 ほんとうはね、いつまでも、この宇宙の『e』でとどける、おんがくかい。銀河をなぞる自然対数しぜんたいすうとともに、そう、つづいてくれれば、いいのだけれど……。

 そうだね。僕たちはいつも、この宇宙で、あらそってきたからね……。 


 バチがあたったんだよね。僕たちは。 

 そうだね、この宇宙を、おこらせちゃったんだからね。

 だね。 

 うん、だよね。


 ねえねえ? 

 なにかな??


 ねえ? 彼ってさ「P」に、にていないかな? 

 …………あ、ああ! そうだね「P」に、にているね!!

 ふふっ。「P」らしいね。彼って!! 

 はははっ!! ああ、彼は「P」らしいんだよ。


 ほんとにね。 

 ほんとうにだよ。


 ほんと……。 

 ほんとうに…………ね。


 このVRの、こんぽんの言語げんごの素数そすうみたいだ――




 ♪♫♫ ♪♫ ♪♫ ~ 




 ――ねえ? この宇宙のそりゅうしたちのさ、ねいろは、いつも美しいね。

 うん、ほんとだよね。


 だよね……


 ね……



 ……………



 ほ  ン  斗  ウ  NI    ねぇ ……    … 





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