第17話
テスト期間に入ると、ほとんどの部活動が停止となる。だからといって普段あまり通らない場所には近づくもんじゃないなと思ったのは、体育館裏での光景を見てしまったからだ。
「松方君、好きです!付き合ってください!」
告白の現場というのは、今まで何回も見たことあるが毎回ドキドキする。覗くという行為は悪趣味だが、遭遇するとつい見てしまう。男の反応が気になる。
「……告白、ありがとな。でも俺、今は部活に集中したいから……、ごめん」
「そっか…」と告白に失敗した女の子は、どこかへ走っていった。残された男は頭をかきながら、ばつの悪い顔をしている。
「おいおいどうするよエツジ?」
「どうするも何も……。こっちが聞きたいよコウキ」
人様の告白にとやかく言う権利なんてないのだが、俺とコウキは勝手に興奮していた。高校生なんてのは所詮こんなものだ。
興奮しすぎて声がでかくなり、告白されていた男がいつの間にか背後に立っている。
「お前ら……。覗きとは随分悪趣味だな」
「いやー…アハハ…。別に聴くつもりはなかったんだけどな…。たまたま聞こえてきちゃって、なあエツジ?」
「あ、ああ。決して覗きじゃない。偶然だって。そんなに睨むなよ。リキヤ」
告白されていた男というのは、俺たちの友達の
長身でバスケ部のエース、コウキが爽やか系ならリキヤはワイルド系のイケメンで、告白されるという話はよく聞く。今回はその現場に居合わせてしまった。
「まあ見られたもんは仕方ないか」
「てかさー、何で断ったんだよ?相手の子、可愛いし、いい子そうだったじゃん」
何を基準に「いい子」と言っているのかわからないがコウキが言うならそうなのだろう。
「今は部活に集中したいからな。中途半端には付き合えない」
リキヤは硬派だ。真剣に思うからこそ断ったのだろう。
「カーッ、お固いねー。別に両立くらいできるだろ?むしろやる気アップでプラスになるかもしれないぞ」
コウキは軟派…ってわけじゃないけど柔軟ではあるな。
「お前みたいに遊び呆けている奴には言われたくないな」
「俺は別に遊び惚けてはないって!エツジからも何か言ってくれよー」
「知らん」とあしらう。コウキにはこれくらいがちょうどいい。「そんなー」と言いつつ、俺もコウキもリキヤも笑っている。
昔と比べて今のリキヤは大分丸くなった。以前を知る俺たちはそれを嬉しく思う。それくらい昔のリキヤは荒れていて、危うかった。誰彼構わず、気に食わない奴にはすぐに咬みつく。体躯も大きく、喧嘩も強かったので、地元でも有名になっていった。そんなリキヤを周囲の人も自然と避けるようになった。
名が売れれば反感も買いやすく、いくらリキヤが強くても、日に日にケガが増えていく。そんな様子を俺は見てられなかった。少なくとも俺は、友達だと思っていたから。俺は喧嘩をやめるように注意するようになった。この頃からトラブルにも巻き込まれていくようになる。リキヤも最初は気にしていなかったが、次第に拒絶するようになる。あまりにしつこく付きまとう俺が鬱陶しかったのか、それとも、巻き込まれてケガする俺を見かねてなのか。
それでも俺は離れなかった。ここで関係を断ったら、この先ずっと悔いが残る気がしたから。
そしてあの日、俺とリキヤは正面から衝突することになる。
俺の取った行動、そのやり方含めて、正しかったのかはわからないけど、今こうして笑いながら話している光景を見ると、間違いではなかったと思う。
そのままの流れで俺たち3人は学校を出る。
「てかさ、この3人て久々じゃね?」
「確かに」
中学の頃は、女子抜きでも3人でよく遊んでいた。男同士だからこそできる馬鹿話はなかなか楽しかった。高校に入って部活も忙しかったりと、男3人で集まるのは今日が久しぶりだった。
「今日はみんな部活ないんだよな?」
「ああ」
「俺は元々入ってない」
「てことは、久々にアレをやるしかないな…」
「アレって何だよ?」
「ふむ。アレだな」
わかってないのは俺だけなのか?
「そうと決まれば場所を移そうぜ!」
何のことかよくわからないまま、肩を組まれて連れていかれる。
着いたのは某有名ハンバーガーチェーン店。
来てしまったのものは仕方ないので、とりあえずポテトとシェイクを頼んで席に着く。コウキはバーガーセット、リキヤはハンバーガーを山盛りにして、席に着く。
というか勉強はいいのか?
「それで、アレってなんだよ?」
「なんだよエツジ、わかってなかったのかよ?」
「男3人でやると言ったら…」
「「男談義だろ!」」
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