第一章 ひとときの安らぎ7
「総司さん、お待たせしました!」
「おまたせー!」
着替えを終えて、女子たちが着替えを終えるのを待っていた総司たち男性陣の前に先んじて現れたのは、鈴華とルリだった。
当然ながら二人は、前に
学校で着用するようなものでない。鈴華の水着は、海に似合いそうな、上下が分かれたセパレートタイプのものだ。パレオだってついている。
対してルリのものといえば、小学生のスクール水着そのままで、当然のごとく二人のおでこには、先日買ったばかりの水中眼鏡もついていた。
総司がこうして水着姿の二人を見るのは、一緒にお風呂に入ったあの日以来のことだ。
当然のように一緒に入ろうとルリが誘ってくることはあったのだが、全て断っていた。
やはり恥ずかしいし、鈴華と一緒というのも、いろいろと我慢が効かなくなりそうだったからだ。
(しかし、やっぱりいい身体してるよな……)
総司の視線はルリではなく、じっと鈴華に注がれている。
日々戦闘の訓練をしているだけにしっかりと引き締まっているし、筋肉だってついている。
とはいえ、もちろん女性らしい丸みもあれば、出るところはしっかりと出ていて、発育途上の中学生身体にしては、本当に立派なもの。
芸術的に見ても、素晴らしい凹凸だと言えるだろう。
続いて、水着に着替えを終えた宮子たちも、総司たちの元にやってきた。
「総ちゃん、どうかな?」
「どうって……」
もじもじとした様子で、宮子は頬を染めていた。
彼女が着用している水着も、学校でよく見ているスクール水着ではなく、鈴華に近いビキニタイプの水着だ。
鈴華ほどではないとはいえ胸も大きく、そこに視線が吸い付けられてしまうし、おヘソだって見えている。
(宮子って、こんなに胸が大きかったっけ? それに、こんなおヘソをしてたんだな……)
これまでに見たことがあったような、なかったような……。
でも、こんな風に意識して見るのは、総司にとってはじめてのことだ。
なんだか全体的に色気を感じてしまうのは、頬を赤く染めているからなのか——それとも、身体が成長していることを感じるからなのか。
ドキドキする胸の感情を総司が整理していると、
「おい、総司」
声を掛けてきた樹に、肘で脇腹を突かれた。
「鈴華ちゃん、中学生なのに胸がデカくてすげーな」
「お前っ、なにを言って——」
でも、確かにその通りなのだ。
全員を比べて、年齢的には下から二番目のはずの鈴華が一番大きい。
一番小さなのは、言わずもがなルリだ。
「いやー、それにしても、ほんと絶景だなー。バーベキューが中止になってショックだったけど、プールに来てよかったって、改めて思うぜ!」
樹が興奮した様子で声をあげた。
他の男子たちも、うんうんと頷いている。
確かにこれだけの水着姿の少女たちが目の前にいるというのは、本当に華やかで、眼福なものだ。
とはいえ、特に鈴華の胸にクラスメイトの男たちが注目しているというのは、やっぱりもやっとするものがあって——。
そんな男子たちのいやらしい視線に、女子たちも気付いたようだ。
「男子ぃ、そんな目で鈴華ちゃんを見るのはどうかと思うよー? 鈴華ちゃんだって、気分がいいものじゃないでしょ?」
そう言って、クラスメイトの女子一人が、樹たちを睨み付ける。
他の女子たちも、同じように樹たちを睨み付けていた。
「あ、いえ、その……お気遣いなく……」
これまでは気にしてもいなかった鈴華だが、指摘をされて、逆に気になってしまったようだ。
頬を染めて、胸元を隠してしまう。
そこで気遣うように声を掛けたのは宮子だ。
「気にすることないよ、鈴華ちゃん。プールの中に入ったら隠れちゃうし、男子の視線なんて、気にならなくなるからさ。それに、楽しいしね! ってことで——」
宮子は鈴華の手を取った。
もう片方の手もルリに伸ばして、
「ということで鈴華ちゃん——そして、ルリちゃんも。プールに入ろ!」
「うん! ルリ、はいる!」
宮子の手を握るルリ。
本当に宮子にも懐いていて、驚くほどだ。
飴の力、おそるべし。
「それじゃ、レッツゴー!」
右手に鈴華、左手にルリと、二人を引っぱるようにして、宮子はプールの中心にある、大きなウォータースライダーを囲むように配置されていた、流れるプールに向けて走り出した。
しかし、すぐにルリが足を止めて、
「パパ、はやく!」
振り返り、急かしてくる。
「ああ、わかったよ」
なんだか立場的には宮子の方がお父さんみたいだな、なんて思いながらも、総司は周りのクラスメイトたちに声を掛ける。
「そんじゃ、みんなも行くか」
当然、誰も否定することはない。
宮子の先導によって、総司たちはルリと同じように、プールに向けて走り出した。
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