第34話



 コンテスト会場は大いに盛り上がっていた。誰もが笑顔で、酒を飲み、美女の登場を待っていた。

 俺もアリシアに付き添われながら、ボックス席でステージ上を眺めている。

 さすが娼館の街・ピアノーゼ。酒もいちだんと美味い。

 俺は毒耐性のスキルをパッシブにしているから、悪酔いはしないが、酩酊感だけはある。ありがたい話だ。


「そろそろみんな出てくるようだぞ」

「楽しみですね」


 ステージに華やぐ美女たちが現れる。

 ミルキとアギサもいた。二人とも桃色と淡いブルーのドレスアップをしていてとても綺麗だ。

 ミルキは初々しい新妻感がすごいし、アギサは清潔感のある青が処女性を際立たせる。

 この二人の姿を見れただけでも儲けものだ。

 ほかの美女たちもすごい。たとえるなら週刊誌のグラビアアイドルのような。

 若く美しく、肌も髪も輝いている。全員とベッドを共に出来たらどれほどよいだろう?


「レイジ様、目の保養はいかがですか?」

「うむ……ま、まぁまぁだな」

「ふふふ……無理なさって」


 アリシアに笑われてしまう。少し照れる。


「……おや?」


 俺は目を瞠った。

 一人、とんでもない美女がいた。

 青い髪に、豊かな胸。漆黒のドレスを身にまとい、憂いを帯びた瞳が俺と合った。


「…………」


 微笑まれた気がする。心臓を鷲掴みにされたようだ。

 なんという美しさ……

 名札を見れば、『リンファ』というらしい。


「あの娘……」

「リンファですか。なんでも、この娼館街のトップシンガーらしいですよ。……娼婦ですけれど」

「娼婦でも構わない。素晴らしい……」


 コンテストの間、エントリー者は歌ったり踊ったりしていたが、俺の目はあの名娼婦・リンファに釘付けだった。

 結局、コンテストはミルキやアギサも慣れない歌を披露したものの、当然のようにリンファがかっさらっていった。


「ああ……メジアルド帝国のダイヤの首飾りがリンファのものになってしまいましたね」

「うむ……決めたぞアリシア」


 俺は宣言した。


「今夜は、あの女と寝る!」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る