第28話




 俺たちはミルキング王国を後にした。村人たちの感謝の声援を浴びながら歩いていくとなんだか勇者のようだ。


「ハルト様、これからどうなさいますか?」


 俺はずれていたアリシアのフードをちょっと直して美しい顔と銀髪が見えるようにする。


「そうだな。国を作ったことだし、必要なのは国民だ。今後はダンジョン都市や貴族の城を訪れて占領し、その市民をミルキング王国の国民にしようと思う」

「なるほど。ゆくゆくはどうなされるおつもりで?」

「この大陸に王国はいくつもいらない。まずはこのライナード王国領をそっくり頂き、それから大陸全土の制圧に乗り出す!」

「まあ……ということは、天下統一を目指されるのですね?」

「そういうことになるな」

「ふふ、レイジ様がどのような覇王になられるか……アリシアは楽しみでございます」

「うむ。期待していろ」


 忘れてはならないが、俺を排除しようとした冒険者ギルドのボスも殺さないといけない。

 というかもう、冒険者ギルドは俺のモノにしようと思う。

 クズどもが仕切っていたって腐敗するだけだからな。




 そうして近場のダンジョン都市を目指している道中。

 俺たちはテント村を見つけた。かなりの数のテントが野営している。

 どうやら難民のようだ。


「ふむ……もしかするとペレペイやその前に滅ぼしたギルメイの民かもしれんな。あそこはダンジョンコアを抜いたから滅亡したはずだ」

「あ、そうですねレイジ様。ペレペイで見かけた人が何人かいます」

「やはりそうか」


 俺がテント村に近づくと、若い男たちが凶暴な顔つきで近づいてきた。


「誰だてめぇ! 俺たちになんのようだ!」

「まあ聞け。俺の名はレイジ」

「な、なんだと!? 俺たちの都市を滅ぼしたあのレイジか!」

「憎き仇だ、殺せぇっ!」


 色めき立って俺に殺到する若い衆を俺は一喝した。


「黙らんか!!!!!!!!!」


 ビクッ、と体を震わせて呼吸すら止まる難民たち。

 俺はやつらを睥睨しながら言った。


「過ぎたことを言ってどうなる? おまえらの都市は冒険者ギルドに牛耳られて腐敗していた。おまえたちもそれに加担していたのだ。これは当然の末路だろう」

「ぐっ……とはいえ、俺達は住む家も仕事も失った! どうやって生きて行けというんだ!」

「ここから西にいったところにミルキング王国という新しい国がある。そこへいけ」

「なんだと……?」

「俺はこのライナード王国を滅ぼすつもりでいる。おまえらが助かる道は、ダンジョンコアさえ平気で抜き出せるこのレイジ様が王となる国に従うだけだ。拒否権などない。文句がある者はこの場で斬り殺す」


 悩む様子で顔を見合わせる村人たちに俺はため息をつく。


「どうせここで死ぬか、わずかな希望に賭けて生き延びるかしかないんだ。考えるだけ無駄だぞ」

「確かに……で、では俺たちのことは見逃してくれるのか?」

「俺の作った素晴らしい王国の国民として誇りある暮らしをするのであれば、な」

「……わかった」


 男たちは武器をおろした。


「あんたに従う。結局、この世界は強いものに従った方が楽だからな」

「そうだ。そして俺は誰にも負けない。だから俺に従うのが賢い選択だ」

「荷物をまとめて、あんたの国に行くよ」

「そうするがよい」


 テント村は撤収を始めた。


「この調子で各地の難民を国民として迎え入れよう」

「すごい、レイジ様。社会問題まで解決してますね!」

「そうだろう。ま、俺にかかればこんなもんよ」


 尊敬の眼差しで見上げてくるミルキの髪を撫でながら、俺は東の最奥、はるか遠くライナード王国の首都がある方角を見つめた。

 国盗り物語にしてやる。



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