第25話




 あれからさらに二週間が経ち。

 村人たちの練度はかなりのものになっていた。もうD級冒険者クラスはあるだろう。

 それも俺の細やかな指示と、アリシアの魔法訓練のおかげだ。

 そろそろ、決行してもよい頃合いだろう。

 俺たちはジューヌ男爵を襲撃することにした。



 夜。

 城は物見台以外は灯りもなく、寝静まっているようだった。

 昔から夜討ち朝駆けは戦争の習わしだ。

 しかし、仕掛ける側というのは気分がいいものだ。

 相手が動揺し錯乱することが確定しているわけだからな。


 俺は闇夜にまぎれた村人たちを集め、突撃の準備をさせた。

 みな興奮し、自分の武器を命綱のように握り締めている。


「よし、では作戦を決行する。ミルキ」

「はい!」

「フェニックスを召喚してくれ」

「わかりました。召喚っ!」


 フェニックスが夜闇に出現する。


「では、頼む」

「はい。いって、フェニックス!」


 ミルキの呼び声に応え、フェニックスは空高く飛び上がり、

 紅蓮の火球のつぶてをいくつも城へと放った。


 ドッゴォォォォォォォン!!!!!!


 一瞬で火災発生。城の鐘がけたたましく鳴り響かされる。

 俺は高笑いしながら宣言した。


「さあ、パーティの始まりだ! ゴミどもに思い知らせてやれ、貴族に生まれたことが、最悪の運命だったということを!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 圧政に苦しめられた村人たちが、城門を打ち破って城内へと突撃していく。

 俺は後ろからそれについていきながら、応戦しにきた城の兵士たちを斬り殺していく。


「ジューヌ男爵! どこだっ!」

「俺たちをさんざん苦しめやがって!!」

「ぶっ殺してやる!!!!」


 意気軒高な村人兵たち。それでこそ鍛えた甲斐がある。

 白兵戦しかできない者を先頭に立たせ、アリシアが育てた魔法部隊が後ろから活路を魔法で切り開いてく。

 炎が踊り、雷鳴が轟いた。

 城内はあっという間に返り血で真っ赤になり、貴族の騎士どもは魔法で焼かれ、村人兵の武具に刺し貫かれ絶命していく。

 こんなところで死ぬはずはなかった、という顔をしている。

 愚かなことだ。俺がいる限り、誰の前にも死の運命は存在するというのに。


 俺はジューヌ男爵家の歴代の肖像画などを焼き払いながら、先へと進んだ。

 そして城内の最深部、おそらく男爵の寝室がある部屋に辿り着き、その扉を蹴破った……



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