第23話


 渓谷に辿り着いた俺たちはさっそく魔物狩りを始めた。

 が、やはり村人たちは魔物に怯えてしまってなかなか攻撃しようとはしない。

 確かに初心者にはきつめの魔物が多いが、武具さえあればどうにでもなる。


「おまえら! そのような体たらくで騎士を倒せると思っているのか!」

「し、しかしレイジ様。あのようなリザードマンやリッチマンを倒した経験のあるものなど我々にはおりませぬ!」

「何事もやってみて、だ。確率だの根拠だのは下らぬ妄言だ。俺の技を見てみよ!」


 俺は風王剣を取り出してリザードマンを切り裂いた。

 倒れたリザードマンの死体を足蹴にする。


「どうだ、俺のように強くなれば、こんなものに怯える必要もないのだ」

「う、うう……」

「やれやれ、しょうがないな。ミルキ、ニャンタを村人の護衛につけてやれ」

「わかりました! いって、ニャンタ」

「しょうがないニャ」


 ニャンタが村人たちの前で仁王立ちする。といっても、彼らの背丈の半分しかないのだが。


「おまえら! 我輩が露払いしてやるから後に続くのニャ!」


 まだ残っているリザードマンにニャンタが剣を向ける。


「喰らうのニャ! サンダーボール!!!!」


 剣先から雷の球体が現れ、リザードマンたちはいっせいにしびれ始めた。


「グ、グウウ!」

「今ニャ! 切り刻めーっ!」

「う、うおおおおお!!」


 相手が痺れた好機に発奮したか、村人たちがリザードマンを攻撃し始める。

 うむ。順調に倒しているようだ。


「す、すげえ! さすがレイジ様の武具だ!」

「あのリザードマンの鱗が豆腐みたいに斬れるぜ!」


 武具の強さに感動している村人たち。

 俺が苦労して集めた逸品ばかりだからな。大切に使うがよい。


「アリシア、そちらはどうだ?」


 俺は村人たちの中から魔力の素質のあるものを厳選して、育成をアリシアに一任していた。


「はい。初級の魔法から始めていますが、簡単なファイアーボールくらいなら使えるようになりつつあります」

「ふむ。やはりアリシアは有能だな。こちらの兵士どももそのようになってくれるとよいが」

「レイジ様が目をかけておられるのです。きっと大丈夫でしょう」

「だといいがな」


 俺はそばに猟師小屋を見つけ、今晩はみんなでそこに泊まることにした。

 本格的な山籠もりだ。強くなるまで村には帰さん。


 夕飯の肉は魔物から取ればよいので、俺は山菜集めをコツコツと進めた。

 ううむ……なんか善人ムーブをするとムズがゆいな。

 今夜は村娘の誰かをさらってしまおうか。

 それぐらいの役得はあってもよいだろう。




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