第22話
翌朝。
俺は村人たちを集めた。襲撃がバレた村人たちはこれから処刑されるかのように顔を青くしている。
無論、そうされてもおかしくはなかった。
だが餓えただけの村人を虐殺するだけでは面白くない。根本的な原因である貴族を根絶やしにしなければ。
ダンジョンで貴族のいるパーティに出会ったこともあるが、どいつもこいつも横柄でイライラした。今まで目こぼしで命を助けてやっていただけだ。もう我慢することもなかろう。
「貴様ら! 俺はレイジ。貴族に恨みあるものだ。貴様らの俺への攻撃は許しがたいが、特別に見逃してやろう」
おお……と村人から感謝のため息が漏れた。
「ありがとうございます、レイジ様」
「うむ。しかし、このまま貴族の言いなりになっている貴様らを見ると虫唾が走る。自分たちの村は自分たちで守るがよい」
「と、言いますと?」
「俺がダンジョンで集めた武具をくれてやる。アリシア、アイテムボックスを」
「はい、レイジ様」
アリシアがアイテムボックスを開放した。そこからザクザクとレア級装備が出てくる。
村長らしき爺さんが腰を抜かした。
「ひええっ! そ、それはダンジョンの奥深くにしかないといわれる武具の数々! それを売ればわしらは二年は暮らせるのじゃあ……」
「バカ者、売るんじゃない。装備しろ」
「そ、そんな恐れ多い」
「俺が許す。さあ、着けろ!」
村人たちは震える手で装備を付けた。恰好だけ見ればAランク冒険者だ。
俺は満足して頷いた。
「よし、いいだろう。あとは貴様らの戦闘力を鍛える。ニャンタ、こいつらの強さはどれほどだ?」
ニャンタはミルキの腕の中で首を伸ばして、村人たちを睥睨した。
「ニャー。どいつも大したことないニャ。レベル換算で2~3といったところニャ」
「たとえば貴族の騎士だと何レベルくらいだ」
「一般兵で10レベル。将校クラスで20レベルだニャ」
「では15レベル程度まで上げよう。村長、ここらへんで魔物が出るところはあるか?」
「はい……少しいった先の渓谷には魔物が棲みついております。で、ですが危険なので普段は誰もいかないようにしております」
「よし。では、山籠もりをしよう。今から出発し、レベル15になるまで村には戻さん」
「そ、そんなあ! あんまりですじゃ、死んでしまいますですじゃ!」
俺は村長を睨んだ。
「そんなありがたい武具があっても魔物と戦えないか? それなら今ここで死ぬか?」
「ひ、ひいっ……」
「おまえたちに選択肢などない。さあ、歩け!」
俺は尻を叩くようにして村人どもを山へ向かって歩かせた。
その中から、昨日の襲撃者の青年が俺に話しかけてくる。
「レイジ様……ありがとうございます。これで村のみんなも目が覚めるでしょう」
「礼を言うのは鍛錬が終わってからだな。村長の言う通り何人か死ぬかもしれん」
「それも名誉のうちです。奴隷でいるよりは……」
「ふっ。貴様、骨のあるやつ。期待しているぞ」
「はっ!」
俺が背を叩くと、青年は嬉しそうに背筋を伸ばした。
心根の素直な若者は鍛え甲斐があるな。
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