第20話



「ダンジョンが崩壊したあ!」

「だ、誰がダンジョンを攻略したんだ!?」

「あなたあああああああああああああ!!!!」


 ペレペイのダンジョンは崩壊し、混沌が訪れた。

 ダンジョン以外に収益のないこの都市は滅亡を免れないだろう。


「もうここに用はない。いくぞ、アリシア。ミルキ」

「はい……」


 ミルキがとぼとぼと歩いてくる。

 出口の門のところで、足を止めて振り返った。


「…………」

「どうした、罪悪感か? 世話になった人でもいたか」

「いいえ、いません」


 ミルキは毅然として答えた。


「この町は、私に優しくしてくれませんでした」

「そうか。ならよかった。重荷に感じることはない。おまえに優しくしなかった人間が、いま、誰にも優しくしてもらえないだけだ。この世の摂理だ」

「はい、レイジ様」

「これからは好きな時に描きたいものを描くがいい。画材も自由に買ってやろう」

「ありがとうございます」


 ミルキの頬から涙が一筋零れ落ちる。


「私……立派な画家になってみせます。ずっと、夢だったから……」

「その夢を、この町の連中は足蹴にしたんだな?」

「……はい」

「ならば迷うな。おまえのことは、俺が守ってやる」

「ありがとうございます、レイジ様。本当に……」

「もういこう。土埃が目に痛む」


 崩壊と混迷のるつぼと化した都市から、俺たちは旅立った。


「アリシア、次の目的地はどうする?」

「そうですね、しばらくダンジョン都市はありませんから、優雅に物見遊山といったところでしょうか」

「ふむ……そうか。ではなるべく野営せず済むように、村から村へ渡っていこう」


 焦ることはない。時間は数えきれないほどあるのだ。

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