第15話




 俺たちはミルキの装備を見繕うために武器防具屋に来ていた。


「ミルキ、今日からおまえも冒険者だ。どんな武器を扱いたい?」

「ぶ、武器なんて触ったことがありません、レイジ様」


 ミルキは剣や斧を見るだけで怖がっているようだ。


「そうか……ならば魔法はどうだ? 使えるか?」

「ごめんなさい……魔法はセンスがないと言われてしまって」

「ふむ。俺の見立てではそんなことはないのだがな。さぞや師に恵まれぬ人生だったのだろう」


 俺はミルキを抱き締めた。


「れ、レイジ様! 店長のおじさんが見てます……」

「気にするな。どうも俺はおまえが気に入ってしまってな。愛しいのだ」

「レイジ様」

「はは、妬くなよアリシア。おまえも俺の大切な人だ」


 アリシアは頬を赤らめている。かわいいやつだ。

 これからも虫けらどもから彼女たちを守らねばならんな。


「しかし、ダンジョンに潜るならミルキも自分の身を守れるくらいの強さはあった方がいい。その方が俺も助かるしな」

「れ、レイジ様のように強い方を守れるようになんて、私にはとても……」

「自分のことは信じろ、ミルキ。そうでなければ、誰も信じてはくれない」

「レイジ様……」

「絵は描けるんだ。そうだな……」


 俺はしばらく沈思黙考した。

 そして閃いた。


「そうだ、アリシア。召喚魔法を教えてやるのはどうだ?」

「召喚魔法、ですか」

「ああ。どうだミルキ、空中に一瞬で魔法陣を描く。できるか?」

「あ、それなら、できると思います」

「そうか! やはりおまえは優秀だ、ミルキ」

「えへへ……」


 俺たちは武器防具屋を後にしようとした。

 ひげづらの店長が立ちふさがる。


「おい、冷やかしか、兄ちゃん」

「どけ」


 俺が蹴り飛ばすとひげづらは泣きながらその場に蹲った。


「ひいいいい、いたい、いたいよお」

「ひげは剃った方がいいな。おまえは何もできない子供同然だ」


 俺たちは悠々と店を出た。


「空地に行こう。その前に杖がいるかな?」

「大丈夫です、レイジ様。魔法陣は絵筆でも扱えます」

「そうか、では、不要だな」


 俺たちは空地へ向かった。


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